
本記事では、0.8mmノズルについて詳しく解説していきます。
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ノズル径の大きさには種類がある
FDM方式の3Dプリンターは、ノズルが使われています。

ヒーターによって軟化された樹脂は、押出機によってノズルから排出されます。

ノズルの穴のサイズが変わると、「造形線の太さ」も変わってきます。一般的なノズル穴のサイズは0.4mmですが、その他には0.2mmや0.6mm、0.8mm、1mmなどがあります。

0.2mmノズルは細い造形線をプリントすることができますので、小さいモデルに向いています。
また、0.6mmや0.8mmノズルは、造形線が太くなるため、大きいモデルに向いています。
大きいノズルを使うデメリット
① 小さいモデルに向かない
1つ目は、小さいモデルに向いていない点です。

塗り絵と同じで、太いペンを使った場合、細かい部分がはみ出しやすくなってしまいます。

スライサーソフトで、0.4mmと0.8mmノズルの違いを見ることができます↓。このように確認してからプリントした方が良いです。

実際に0.8mm径のノズルでプリントすると、線の幅が0.8mmとなり、線は太くなります。すると、線との間の隙間が生まれやすくなります。

このように、細部の表現が甘くなってしまいますので、精度が求める場合は、0.4mmや0.2mm径の細いノズルを使うことをおすすめします。
関連記事:0.2mmノズルを使えば、超キレイにプリントできる
スライサーソフトの「押出幅」や「流量」を調整すると、見栄えを調整することもできます。
関連記事:流量(FLOW・吐出量)とは?
② シーム部分が目立つ
2つ目は、シーム部分が目立つ点です。

シームとは、継ぎ目のことです。各レイヤーをプリントするには、開始点と終了点が必ず発生します。その「つなぎ目」のことを指します。

大きいノズル系を使うと、シーム部の流量が不足し、見栄えが悪くなりやすくなります。
シーム部を目立たせなくする方法は、↓の記事でもご紹介していますので、確認してみてください。
関連記事:シーム・継ぎ目を解決する方法!
またノズル径が大きと、書き始めに時間がかかり、シームがスカスカに仕上がってしまうこともあります↓。

③ 樹脂垂れが起きやすい
3つ目は、樹脂垂れが起きやすい点です。

ノズルの穴が大きいと、樹脂が垂れやすくなります。

垂れたままノズル移動が起きると、糸引きができやすくなります。

スライサーソフトで、リトラクションやトラベル速度などを変更すれば、緩和できる場合もあります。
関連記事:3Dプリンターのリトラクトとは?
④ 機種が限られる
4つ目は、機種が限られる点です。
0.8mmノズルは0.4mmほどメジャーではありませんので、メーカーや機種によっては満足に対応していないことがあります。
仮に対応していても、パラメーターの設定が満足に準備されていない場合がありますので、情報を確認してから使いましょう。
大きいノズルを使うメリット
① プリント時間が短縮できる
1つ目は「プリント時間が短縮できる」点です。

0.4mmノズルの造形線は細いですが、0.8mmノズルの場合は、より太くなります。塗り絵と同じく、太いペンを使えば、早く塗りつぶすことができますよね。
また、ノズル径が大きくなれば、一層あたりの積層ピッチを厚くすることができます。
関連記事:積層ピッチ(レイヤーの高さ)とは?
0.4mmノズルだと、およそ0.3mmの積層ピッチくらいまで増やすことができますが、0.8mmノズルでだと、0.5mmくらいまで増やすことができます。
結果的に、層の数が少なくなることで、短時間でプリントすることができます。

見た目に影響が出てしまうものの、早くプリントを完成させたい場合には効果的です。
ただ、近年では超高速プリントができる機種が増えてきたため、以前よりその効果は薄まっています。
② ノズル詰まりしにくい
2つ目は「ノズル詰まりしにくい」点です。

3Dプリンターでは、ノズル詰まりが起きてしまうことがあります。
その主な原因は、ノズル内の焦げや不純物が、排出されないことで起きやすくなります。

ところが、径の大きいノズルを使うことで、これらが排出されやすくなり、ノズル詰まりが起きにくくなります。

トラブルを減らして安定して使いたいという方におすすめです。
【BambuLab P1S】0.8mmノズルで、プリントした結果
P1Sは、失敗も少なく、高精度でプリントすることができます。
A1やA1 miniよりは、ノズル交換の手間がかかるのがネックですが、問題なく交換することができます。

公式ストアでは0.8mmノズルが販売されていて、そこまで高くはなく、2,580円で購入できます。
宇宙飛行士
ではプリント結果ですが、まずは宇宙飛行士のモデルを0.56mmの積層ピッチでプリントしました。
層はしっかり見えていますが、キレイに積み上げられています。

こちらは0.24mmの積層ピッチでプリントしたものです↓。滑らかに仕上がっていますね。横から見た感じでは、0.4mmノズルでプリントしたものとあまり変わりはありません。

比較するとこんな感じです↓。数値の割に、大きな違いはありませんが、よく見ると積層の見え方が違います。

続いて、0.54mmピッチの背中のオーバーハング部はこんな感じです。いい感じに積み上げられています。

関連記事:オーバーハング(Overhang)とは?
比較するとこんな感じです↓。仕上がりがかなり違います。0.2mmピッチの方が荒れていますね。ピッチは0.4mmくらいがちょうどいいと思います。

次は上から見たところです。これは0.54mmですが、やはり解像度は荒いです。

0.2mmピッチと比較するとこんな感じ。0.2mmピッチの方が層が多いので、やや解像度が高いです。

上から見ると造形線の太さが目立ちます。0.8mmノズルはやっぱり太いですね。
3DBenchy
続いて、3D Benchyをプリントしてみました。積層は0.54mmピッチです。やや積層痕が目立ちますが、特に問題なく作れています。

0.4mmノズルでプリントしたものと比べてみます。小さい丸穴の部分が、0.4mmノズルはキレイにできていますが、0.8mmノズルの方は潰れかかっています。

0.8mmノズルでは、このような精密な部分の再現が難しいようです。
また0.4mmノズルの方は、屋根の部分が繊細に仕上がっていますが、0.8mmノズルの方は、太くくっきり表現されています。

横から見た時は、大きな違いはありませんでしたが、上から見てみると違いますね。
横穴を見てみます。どちらも形は崩れていませんが、0.8mmノズルの方は解像度が低く、ピンボケしているように見えます。あと、穴のサイズがやや大きく見えます。

次に、大きいサイズの3DBenchyをプリントしてみました。積層は0.54mmでプリントしました。全てPLAですが、青色部分は半透明PLAフィラメントです。

銀色の部分は「くっきり」見えていますが、青色の部分はそこまで目立っていません。オーバーハング部分もいい感じです。
船の窓のブリッジ部では樹脂が垂れていません。結構なストロークがあるんですが、造形線を太くすることができるためか大丈夫です。

次にプリント時間ですが、一般的に使われる0.4mmノズル、0.2mm積層ピッチだとおよそ「10時間15分」で造形できます。

そして今回プリントした0.8mmノズル、0.54mmピッチだと、およそ「8時間27分」でプリントすることができました。およそ108分の差がありました。
20mmボックス
続いて、20mm辺のボックスをプリントしていきます。押出幅の値を0.78mmと0.8mmと0.82mmの3パターンでプリントしたいと思います。

加えて正確さを得るため、それぞれ3つずつプリントしました。では、XYZをそれぞれ測っていきます。ちなみにフィラメントは、Bambulab PLAを使っていきます。

結果はこんな感じです↓。平均値の誤差を見てみると、X軸は0.05mm、Y軸は0.08mm、Z軸は0.5mmくらいの誤差を確認できました。

ほぼ全ての造形物の寸法が若干大きくなっていますね。つまり、実際の寸法よりも、太っているということになります。特にZ軸の誤差が大きかったようです。
ただ、これは0.8mmノズルに限ったことではなく、0.4mmノズルでも同じ傾向があります。これくらいの誤差範囲であれば、特に問題はありません。
【Creality K1】0.8mmノズルで、プリントした結果
Creality K1は、自動レベリング調整かつ、超高速なため「早くてキレイな」プリントをすることができます。
※ 現在は、「Creality K1C」や「Creality K2 Plus」などの新機種が販売されています。
またフィラメントは、「eSUNのPLAフィラメント」を使用しました。色はブラウンです。安価に購入することができるので、度々利用しています。
参考程度ですが、MVSは「32mm3/s」に設定し、0.8mmノズルを使用し、0.2mmピッチで実施しました。速度は200mm/sで行いました。
① シームの見栄えが良くない
まず、シーム部ですが初期設定のままでは欠損しました。継ぎ目の部分がプリントしきれていないため、汚く見えてしまいました。

そこで、Creality Printというスライサーソフトの「Outer Wipe Wall Distance」を0.2mmから1mmに変更しました。Advancedのトグルをオンにして、Shellの項目内に表示されます。

するとこんな感じで埋まりました。ちょっと埋めすぎているので、もう少し値を下げた方がいいと思います。

② 定着が良くない
また、定着が良くないこともありました。0.4mmノズルだと発生しにくいですが、ノズル穴が大きいことによる影響が考えられます。

今回はInitial Layer Flow(初期層流量)を100%から105%に変更して、問題ありませんでした。
多少寸法に影響する可能性があります。その場合は糊(のり)を使う方法もありますので、それを試してみるのもいいです。

③ 積層面の精度が下がる
続いて、側面に模様があるモデルをプリントしてみます。

積層ピッチは0.2mm、0.3mm、0.4mmでそれぞれプリントしてみました。まず↓0.2mmピッチでプリントしたものです。側面の模様は認識できるレベルでした。

続いて、0.3mmピッチでプリントしたものです。模様が少し崩れているように見えます。

続いて、こちらは0.4mmピッチです。模様が完全に崩れてしまいました。

一般的に使われる0.4mmノズル、0.2mmのピッチでプリントしたものは、模様はくっきりと表現されているのがわかります↓

並べてみるとこんな感じで、一番左は0.4ミリノズル0.2mmピッチで、続いて0.8mmノズルの0.2mmピッチ、0.3mmピッチ、0.4mmピッチと続きます。

流量や押出幅を調整すれば、少しマシになるかもしれませんが、側面部に模様がある場合には注意が必要です。
さらに造形してみた モデル①

早速ですが、造形結果を記載していきます。 分かりやすいように0.4mmノズルで造ったものと比較してみます。
<底面部>

シェル(壁)の線の太さが明らかに違うことがわかります。

線が太いために、細かいところが塗りつぶせていません。

こちらも同様に線の太さが違います。
<積層面>
続いて積層面です。

<造形時間について>
上記のモデルを作る時間に、大きな違いがありました。
| ノズル径 | 積層ピッチ | 造形時間 | |
| ① | 0.8mmノズル | 0.3mmピッチ | 1時間3分 |
| ② | 0.4mmノズル | 0.2mmピッチ | 4時間43分 |
3時間以上も早くつくることができました。
実際に造形してみる モデル②
工具などを収納する大きめのケースです。

では造形結果です。

下の写真は横から見た積層部です。

ちょっと見にくいですが、あまり積層痕はめだっていません。
ここまで変わる!? プリント時間について
この植木鉢でプリント時間の違いを比較します。モデルのサイズは180mm×180mm×160mmとなります。

スライス結果は以下のようになりました。
| 3Dプリンター速度 | ノズル径 | 積層ピッチ | 造形時間 | |
| ① | ハイスピード機 | 0.4mm | 0.2mm | 13時間14分 |
| ② | ハイスピード機 | 0.8mm | 0.2mm | 11時間37分 |
| ③ | ハイスピード機 | 0.8mm | 0.3mm | 8時間37分 |
| ④ | ハイスピード機 | 0.8mm | 0.4mm | 7時間21分 |
| ⑤ | 標準スピード機 | 0.4mm | 0.2mm | 81時間51分 |
上記のように、ハイスピード3Dプリンターを使うと、プリント時間の大幅な短縮ができます。また0.8mmノズルを使うことで、さらなる時間短縮が見込めます。
以上、0.8mmノズルを使用した結果とプリント時間の違いについて詳しく説明しました。0.8mmノズルを使うことで、プリント時間の短縮が可能であることが示されました。特に大きなモデルを迅速にプリントする必要がある場合には、このノズルサイズの利点が際立ちます。
まとめ
ある程度大きいモデルを作る場合は、非常に効果的でした。
| 項目 | 説明 | |
| ① | 0.8mmノズルとは? | 穴が0.8mmのノズルのこと |
| ② | メリット | 1.造形時間が短くなる。 2.定着が良くなる。 |
| ③ | デメリット | 1.造形線がめだつ。 2.積層痕がめだつ。 3.小さいモデルは、端部にスキマができる。 |







