ABSは、反りや収縮しやすいフィラメントなので、うまくプリントできないこともあります。
そこで今回は、収縮しにくい、耐熱性が高い、ABS-GF25というフィラメントを使ってみましたので、ご紹介します。
ABS-GF25の基本情報
フィラメント中には、強化剤が添加されているものがあります。ABS-GF というフィラメントには、ガラス繊維の強化剤が含まれており、一般的な ABSよりも強度、剛性、耐熱性が高い特徴があります。
今回使ったQIDIテクノロジーの ABS-GF25 では、ABSが 75%、ガラス繊維が 25% の割合で構成されています。
また、一般的なABSよりも基本的な特性は向上しますが、その一方で、低下してしまう項目もあります。
例えば、曲げた力にどれくらい耐えられるかを示すものに「曲げ強度」という項目があります。汎用 ABS の曲げ強度は 「9」なのに対し、ABS-GF25 はおよそ「7.8」となっています。
材料に硬さが出ると、曲げた時の耐える力は低下します。そのため、この特性においては汎用ABSの方が向いています。こんな感じで、すべての値を向上させるのは難しいため、プリントしたものを、どのように使うのかを確認する必要があります。
また、使用する 3D プリンターの性能や備品のスペックにも、注意が必要です。
例えば、カーボンファイバーやグラスファイバー入りのフィラメントを使う場合、硬材質のため通常のノズルでは耐えることができません。そのため、硬化ノズルを使う必要があります。
ABS-GF25でプリントしてみた結果
今回は Bambu Lab P1S という3Dプリンターを使います。ノズルは最大 300℃まで昇温できる上、エンクロージャーに覆われているので ABS-GF25 のプリントも可能です。
こちらの記事も参考にしてください↓
関連記事:Bambulab P1Sを徹底レビュー!
また、先ほどご紹介したように、硬化ノズルに付け替える必要があります。オプション品で用意されています。
フィラメントは QIDI TechのABS-GF25を使います。 色は 4 色用意されています。Amazon でも購入することもできますね。
フィラメントを触ってみると固めで、ポキポキ折れますね。粘りは弱めです。
スーパーエンプラの 「PPS-CF」を試したことがありますが、それに近い感じがします。
関連記事:【PPS-CFフィラメント】スーパーエンプラを使ってみた結果!
3DBenchyをプリント
まずは 3D Benchy をプリントしました↓。浮きや割れなどはありません。問題なく、キレイに仕上がっています。
カーボンに近い積層をしていますね。PPS-CF(カーボン)でプリントしたもの↓と似ていますね。
※ Bambulab PPS-CFでプリント
温度タワーをプリント
続いては温度タワーをプリントしました。温度ごとに仕上がり具合を確認することができます。
240℃から 280℃の範囲でプリントしましたが、どの温度帯でも違いはなく、キレイにできています。
また、糸引き具合も特に違いはありません。オーバーハング部もキレイにプリントされています。規定の範囲内であれば、どの温度帯でも良さそうですね。
試験棒をプリント
続いては試験棒をプリントしました。
こんな感じで、ぐーっと曲げてみます。結構早い段階で折れました。感触としては、粘りはあまりなく、硬い感じがあります。やはり PPS-CF と似ていました。
試しに汎用 ABS でも曲げてみましたが、ABS-GF25 よりも、より曲げることができました。粘りが強いですね。
折れる直前の写真を比較してみると、ABSの方がより大きく曲げられています。汎用 ABS の方が靭性が高いので、衝撃が加わった時は割れにくいです。
基板ケースをプリント
続いては、こんな感じの基板ケースをプリントしました。
薄いフタは少し反ってしまいましたね。これはプリント中に起きたわけではなく、完成した後に反ったようです。
パーツをはめ込んでみると、しっかりはまっていましたので、寸法的に問題なさそうです。
テストキューブも、各軸ともに誤差はほとんどありませんでした。収縮の影響も特に問題なさそうです。
大きいモデルをプリント
続いては少し大きめなモデルをプリントしました。反りや浮きはほとんどなく、底面はぴったり定着しています。
ここまで定着してるのはすごいですね。ビルドプレートにくっつきすぎて、剥がすのがちょっと大変でした。
やすり掛けしてみる
続いては、やすりがけをしてみます。ABSは、後加工がしやすいですが、ABSGF25 ではどうでしょうか?
3D Benchy のモデルを粗目の耐水ペーパーでやすりがけしてみます。やや固めな感じはありますが、削れている手応えはしっかりあります。
では、結果はこんな感じ。汎用 ABS よりもやや固めでしたが、削ることはできましたね。徐々に細めのペーパーで削っていけば、なめらかになっていくと思います。
後加工をする場合、あまり苦にはならなさそうです。
また以前、他のフィラメントでもやすり掛けを試しましたので、そちらの記事も参考にしてください↓
関連記事:ABS以外の造形物にもヤスリをかけてみたらどうなるのか
ABS専用サポート材を使ってプリント
続いては、ABS専用サポート材を使って試します。専用サポート材は、精度よくサポートを立てることができます。

以前、PLA 用のサポート材を試した時は、精度が良く、かつ剥がしやすいというメリットがありました。PLA 専用サポート材が気になる方は、こちらの記事も参考にしてください↓。
では、プリントした結果です。サポート部を剥がしていきます。白い部分がABS用サポート材です。
PLA 用サポート材を試した時は、もっと簡単に剥がれたんですが、ABS 専用サポート材はちょっと剥がしにくいですね。
粘りがあるというか、密着している感じがあります。あまり複雑な形状だと、より剥がしにくいかもしれません。
剥がした結果はこんな感じです。やや剥がしにくさはあったものの、接触面はかなりキレイです。
ABS-GF25のメリットとデメリット
熱変形温度が高い
まず最初は、「熱変形温度が高い」点です。汎用 ABS と比べても高い材料となります。
熱変形温度とは、「一定の荷重をかけた状態で変形する温度」のことです。汎用 ABS がおよそ53℃なのに対し、ABS-GF25では87℃となっています。耐熱を求める場合は、ABS-GF25 を使うのはありだと思います。
より熱変形温度が高いフィラメントもあります。例えば、PET-CFは192℃というものもあったり、PPS-CFフィラメントでは 264℃となっています。
より高耐熱を求める場合は、これらでプリントすると要件を満たせるかもしれません。
PPS-CFフィラメントについては、こちらの記事を参考にしてください↓
関連記事:【PPS-CFフィラメント】スーパーエンプラを使ってみた結果!
反りにくい・浮きにくい
二つ目のメリットは、反りにくい・浮きにくい点です。汎用 ABS は、プラットフォームから浮いてしまったり、割れてしまったり、反りが起きてしまうことも少なくありません。
ところが ABS-GF25 では、反りが抑えられていて、寸法精度も良く、誤差もあまりありません。失敗も少ないため、安心してプリントすることができました。
吸湿しにくい
三つ目のメリットは、吸湿しにくい点です。
樹脂フィラメントは、湿気を吸収してしまう特徴があります。汎用 ABS の飽和吸水率はおよそ0.6%ですが、ABSGF25 はおよそ0.5%となっています。劣化しにくい点は、うれしいですね。
ですが、公式上では、70℃で4時間から6時間ほど乾燥させてから使うことを推奨されていますので、湿気対策は行っておきましょう。
専用ノズルを使う必要あり
注意点は、硬化ノズルを使う必要がある点です。
最初から取り付けられているステンレスノズルでもプリントすることは可能です。ただ、カーボンファイバーほどではありませんが、グラスファイバーも硬い繊維なので、ノズルの寿命を早めてしまいます。
そのため、やはり専用の硬化ノズルを使うことをお勧めします。最近は簡単にノズル交換できる 3D プリンターが増えてきましたので、ぜひ試してみてください。