ABSを使って大きいモデルをプリントするコツ【Ender-3 S1】

Ender-3_ABS_大きい物をプリントするコツ

家庭向け3Dプリンター「Creality Ender-3」で、こんな症状に困っていませんか?

・ ABSで大きいモデルをプリントすると、テーブルから剥がれる。
・ ABSで大きいモデルをプリントすると、クラック(積層割れ)がおきる。

 

もしかすると「Creality Slicer」で調整が必要かもしれません。

 

この記事では、Ender-3 S1↓を使って解決方法をご紹介しています。

 

ABSで大きいモデルをプリントした際に起こる失敗例

ABSで大きいモデルとプリントすると、いろいろな失敗がおきます。

 

まずは、少しだけ失敗例をご紹介します。

 


① プラットフォームから剥がれる、浮く

収縮力が強いため、プラットフォームから剥がれてしまう事があります。

Ender-3_ABS_大きい物をプリント_プラットフォームから剥がれる

↑ひとたび浮いてしまうと、さらにその上に積みあがる造形も歪んでしまいます。

 

ノリを使わずに、設定だけで改善できることもできますので、↓の記事も参考にしてみて下さい。

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ABSフィラメントを使って綺麗にプリントする方法

 


② 積層割れ(クラック)が起きる

ABSで大きいモデルをプリントすると、特に積層割れが起きやすくなります。

 

↓は、200mm角の入れ物をプリントしたものです。

Ender-3_ABS_大きい物をプリント_積層割れクラック

↑ところどころ割れているのが分かります。

 

ABSの収縮力が強すぎるため、「積層の密着が弱いところ」から割れていきます。

 


プラットフォームに定着しない、剥がれる、浮く、ズレる、割れる対策は↓の動画でご紹介しています。

 

まずは1回プリントしてみる

まずは1回プリントしてみます。

 

↓上でご紹介した入れ物のモデルを使用します。

Ender-3_ABS_大きい物をプリント_大きいモデル

↑今回使うEnder-3 S1では、エンクロージャー(囲い)を使いませんので、どこまで耐えられるかがポイントです。

 

むしろエアコン(冷風)が効いた部屋ですので、劣悪な環境でプリントします。

 

ちなみにエンクロージャーを使うと、「プリントエリアの周辺温度を維持することができる」ので失敗を軽減することができます。

 

↓Ender-3用のエンクロージャーが販売されていますので、参考にして下さい。

 

① 設定するパラメーターについて

設定パラメーターを記載します。

1.ノズル温度      : 240℃ 
2.ビルドプレート温度  : 100℃ 
3.ファン速度      : 100% 
4.レイヤーの高さ    : 0.3mm
5.ライン幅       : 0.4mm
6.初期レイヤーのライン幅: 140% 

↑「初期レイヤーのライン幅」を0.4mmにしているのは、プラットフォームの剥がれ対策です。

 

② 造形時間について

↓Creality Slicerで、スライス処理をした結果です。

ABSで大きいモデルをプリントするコツ_造形時間

↑積層ピッチを0.3mmにしても、1日(24時間32分)かかるようです。

 

③ 造形結果

では、1発目の造形結果です。

ABSで大きいモデルをプリントするコツ_積層割れクラック

↑積層割れ(クラック)があっちこっちで起きました。

 

冷房が効いた部屋でここまでできたのは、むしろ上出来な気がします・・。

 

↓プラットフォームの定着は、問題ありませんでした。

ABSで大きいモデルをプリントするコツ_プラットフォームの定着

↑ノリを使わなくて良いので、気持ちいいです。

 

改善方法

では、積層割れ(クラック)に焦点をあてて対処していきます。

 

Creality Slicerでは、細かくライン幅を変更できますので、そこを調整します。

 


① 
1.「準備する」をクリックします。
2.テンプレート部をクリックします。

ABSで大きいモデルをプリントするコツ_準備する→テンプレート選択

 

「品質」の歯車マークをクリックします。

ABSで大きいモデルをプリントするコツ_「品質」の歯車マークをクリック

 

以下のチェックを入れます
1.「ライン幅」にチェックを入れます。
2.「ウォールライン幅」にチェックを入れます。
3.「外側ウォールライン幅」にチェックを入れます。
4.「内側ウォールライン幅」にチェックを入れます。
5.「インフィルライン幅」にチェックを入れます。

CrealitySlicer_ライン幅の設定

 


1.「ウォールライン幅」を0.56mmに変更します。
2.「インフィルライン幅」を0.56mmに変更します。

CrealitySlicer_ウォールライン幅とインフィルライン幅の設定

↑今回は、0.4mmを140%アップさせ、「0.56mm」に変更しました。
「外側ウォールライン」と「内側ウォールライン」も連動して変更されます。

 

ちなみにライン幅の値を増やすことで、「1本あたりの造形線を太く」することができます。

 

それにより、積層の密着力が向上し、割れにくくなるというわけです。

 

スライス処理を行い、プリントします。

 

調整後の造形結果

ではプリント結果です。

 

↓こんな感じに仕上がりました。

大きいモデルをABSで造形した結果

↑よく見ると、少しだけヒビが入っている気はしますが、かなりの改善が見られました。

 

冷房が効いた環境では、かなり上出来だと思います。

 

↓エンクロージャーを使うと、もっと良くなる可能性があります。

機会があれば試してみたいです。

 

高さを変えて造形

モデルをもう少し低くして、リトライしてみます。

 

① プリントするモデル

↓高さを80mmまで減らしてみました。

大きいモデルをABSで造形

↑造形条件は、同じです。

 

② 造形結果

では、プリント結果です。

 

↓積層割れもなくうまくいきました。

大きいモデルをABSで造形_高さを調整

↑これくらいの大きさであれば、問題ないですね。

 

ABSフィラメントについて

今回は「ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)」というメジャーなフィラメントを使用しました。

 

インターネットでも安価に購入することができるフィラメントとなっています。

 

使用した3Dプリンター

使用した3Dプリンターは、Ender-3 S1と言う家庭向け3Dプリンターです。

 

この機種は、多くの最新機能が搭載されていることに加えて、同梱されているスライサーソフトでは、細かい調整をすることができます。

 

今まで企業向けのプリンターを主に取り扱ってまいりましたが、「家庭向け3Dプリンターでこれだけのことができるの?」とすごく驚きました。

 

↓セットアップレビューもしていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

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