熱につよく、形もくずれにくいので、幅広いシーンで使うことができます。
今回は、2つのメーカーのフィラメントを使って、いろいろと検証していきます。
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ASA-CFってなに?
ASAは「アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル」の略です。
ASAは、太陽の光・雨に晒されても、劣化しにくいという特徴があります。
そのため、屋外で使うものを3Dプリントしたい場合には、ピッタリな材料です。耐熱性も高いため、高温の場所にも向いています。「PLAではちょっと心配だなぁ」という時でも安心できます。
そして、なんといってもカーボンが添加されていることで、あらゆる特性が加わっています。例えば、曲げたりねじったりしても寸法が歪みにくい、いわゆる「剛性」が高いという特徴があります。
また記事中にもまとめていますが、「重量が軽い」、「積層痕が目立ちにくくなる」というメリットもあります。
その一方で、柔軟性に欠けるといった一面もありますので、使いどころには注意が必要です。
使用したフィラメント・3Dプリンターについて
まず一つ目は、「Bambulab ASA-CF」というフィラメントです。

Bambulabは1kgで7,800円します。やや高めの設定ですね。ですが仕上がりがとても良く、失敗しにくい印象がありました。
また、RFIDタグが取り付けられていますので、AMSで使うと、スライサーソフトにフィラメント情報が同期されるので便利です。
二つ目は、「IEMAIのカーボンASA」というフィラメントです。
価格は1kgで5,800円くらいで購入できるので、やや安めですね。こちらはRFIDタグは無いので、手動でのマッピング調整が必要となります。
そして、3Dプリンターは今回QIDI Plus4を使いました。
QIDI Plus 4は、チャンバー機能が付いているので、ASAとも相性がいいです。
GDPlus4についてはこちらの記事を参考にしてください。
関連記事:QIDI Plus 4ってどんな機器?低価格なのに業務用!?
また今回、エンクロージャーの無い、オープンフレームタイプの3Dプリンターでも、ASA-CFのテストプリントをしました。ところが、プラットフォームに定着しないという症状が、度々ありましたので、3Dプリンターには注意してください。※ ↓の写真はイメージです。
いざプリント!テストプリントした結果
面積の広いモデル
まずはこんな感じ↓の、面積の広いモデルをプリントしてみます。広さや高さのあるモデルは、収縮しやすく、難しいのですが、どうでしょうか。
まずはBambulabフィラメントからです。結果はこんな感じ↓になりました。反りがほとんどなく、キレイに仕上がっています。
角は、反りやすいのですが、全く問題ありませんでした。積層痕も無く、かなりいい感じです。
続いて、IEMAIのASAカーボンフィラメントです。こちらもキレイですね。Bambulabよりも、やや明るめで、積層はBambulabの方がキレイかな。
ちなみに、チャンバー温度は共に55℃にしました。この効果もあったため、反りにくくなったと思っています。
過去にも試しましたが、カーボンは、大きいモデルでも反りを抑えられますね。失敗が少なくなるのは良いです!
関連記事:【PPS-CFフィラメント】スーパーエンプラを使ってみた結果!
また、同じカーボンでもメーカーによる違いを感じましたので、フィラメント選びはとても重要です。
温度タワー
続いて、Bambulabフィラメントで温度タワーをプリントします。温度タワーは、ノズル温度の違いによる、仕上がりを確認することができます。
プリントしてみるとこんな感じ↓になりました。240℃から280℃で試しましたが、どの層も違いはほとんどありません。
糸引きや、オーバーハングも問題なかったので、ノズル温度はそこまで気にする必要はなさそうです。
サポート
次は、サポートを建ててプリントしてみます。カーボンのサポートは結構剥がしにくいこともありますが、今回はどうでしょうか。
関連記事:サポート材の役割ってなに?
まずはツリー構造のサポートでプリントしました↓。ツリー構造のサポートは材料の消費量が少なく、取りやすいのがいいですね。
こんな感じでパキッと取ることができました。めちゃくちゃ簡単に取れましたね。
サポートの接点も、とてもキレイです。
続いては、通常構造のサポートを剥がしてみます。通常構造は昔からあり、しっかりとしていて安定感があります。
ツリータイプよりも、剥がしにくいことが多いですが、今回は全然苦にならずに剥がすことができました。
取りにくい穴の中も、ラジオペンチを使えば楽に取り除くことができました。
こちらも接点部はめちゃくちゃ綺麗です。サポート造形、オススメですね!
試験棒
次に、こんな試験棒をプリントしました↓。ASA-CFとASAをそれぞれプリントして、どれくらい曲がるのかを確認します。
先に、ASA-CFで曲げ具合を確認します。グッーと曲げてみます。、
すると早い段階で折れてしまいました。
次に、一般的なASAで曲げ具合を確認します。ASA-CFよりも、より大きく曲げることができました。
折れる直前の写真を比較するとこんな感じです。ASA-CFよりも、ASAの方が大きく曲げれています。CFの方が硬いので、早く折れてしまいます。
今回に限らず、カーボンが充填されているフィラメントは、硬めになる傾向があります。靭性は落ちているので、この辺りは注意した方がいいですね。
ASA-CFの特性を整理しよう
ここからは、Bambulabフィラメントを例に、ASFの特性を整理していきたいと思います。
靭性について
靭性とは、樹脂の粘り強さのことで、この値が高いとしなやかさが増して、割れにくくなるといった効果があります。
ASA-CFよりも、一般的なASAフィラメントの方が値は高いです↓。
ASA-CFは、形を維持する力が強いので、割れやすくなる傾向があります。
強度について
続いて、強度に関しては、ASA-CFの方が性能が高く、およそPLAに近いくらいの強度を持っています。そのためか、使ってみるとPLAに似た感覚がありました。
剛性について
剛性とは、ねじったり曲げたりした際、寸法にどれくらいの影響を及ぼすかの指標です。値が高いと「形を維持する力」が優れているということになります。
これもASA-CFの方が高い数値です。ASA-CFは、PLAと同様に、形を維持する力が強いフィラメントになります。
積層間接着性について
積層間接着性が高いと、層の密着が強くなります。これが低いと層が割れてしまう原因となってしまいます。
積層間接着性については、通常のASAよりも高い数値になります。そのため、割れにくく、衝撃にも強くなります。
PLA-CFと比較する
続いて、PLAにカーボンが添加された「PLA-CF」と比較してみたいと思います。
靭性、強度、剛性はPLA-CFの方が値は高くなっていて、ここだけ見ると「PLA-CFの方が良いのかなぁ」と思いますよね。
ですが、熱変形温度が全く違います。ASA-CFは、倍の「110℃」となっていますので、この点は大きな違いとなります。
また、数値化はされていませんが、耐候性についても違いがありますので、屋外での使用はASA-CFの方が向いています。
最終的には、どのような環境で使うのかという点がとても大切になりますので、それに合わせてフィラメントを選定するようにしましょう。