カーボンは、反りにくい・浮きにくい・剥がれにくいという特徴があります。
そこで今回は、ほんとうに反りにくいのかを確認していきます。
検証に使った3Dプリンター・フィラメント
使用した3Dプリンター
まず1台目は、Creality Hiという、エンクロージャーのないタイプのプリンターを使いました。
エンクロージャーが無いと、造形物まわりの温度は保てませんので、ABSやASAフィラメントには不向きです。
関連記事:Creality Hi Comboってどんな機械?
また、もう1台はQidi Plus 4 というエンクロージャー有りのプリンターです。
こちらは、エンクロージャーに加えて、チャンバー機能もあるので、高温度のフィラメントを使うのに向いています。
関連記事:QIDI Plus 4ってどんな機器?
使用したフィラメント
カーボンフィラメントは、IEMAIのASA-CFフィラメントを使います。
そして比較用にRaise3D のASAフィラメントと、今回はQidi TechのABS-GF25も使います。
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オープンフレームプリンターで試した結果
Creality Hiは外装カバーが無いので、反りやすくなります。そんな状況で、「ASA」や、「カーボン入りのASA」でプリントしてみます。
今回プリントするモデルはこんな感じです。面積が広めで、ピン角になっている形状を使います。ちなみにインフィルは15%、シェルは2枚でプリントします。
もう少しインフィルを上げても良かったんですが、材料の都合があったため、15%にしています。
ASAでプリント
ではまず、通常のASAフィラメントでプリントした結果ですが、こんな感じになりました↓。
全体的に反っていて、まあまあ歪んでいます。このように端を指で押すと、カタカタとなります。
収縮によって反ったことで、上にせり上がった部分がノズルに当たっています。また、内部形状の模様が浮き出ていますね。これも反ったことで、発生しています。
やはり、温度が保てないプリンターだとむずかしいようです。
ASA-CFでプリント
では続いて、カーボンが入ったASA-CFでプリントした結果ですが、こんな感じになりました。これも結構反っています。
先ほどのASAと同様、かなり歪んでいます。ノズルと擦れた感じはないものの、程度はほぼ、同じくらいです。カーボンフィラメントを使ったとしても、オープンフレームタイプだとむずかしいですね。
ABS-GF25でプリント
続いて、ABS-GF25でプリントします。
ちなみにABS-GF25は、75%のABSと25%のグラスファイバーの割合で配合されていて、収縮しにくいフィラメントとなっています。
プリントした結果はこんな感じです↓。表面は波打っていて、あまり安定していないですね。
ただ反りは、この中で一番抑えられていました。カーボンよりも反りにくいという結果でした。
オープンフレームタイプの3Dプリンターだと、どれもあまり良くないですね。
エンクロージャー有りでプリントした結果
Qidi Plus 4を使ってプリントします。このプリンターは、外装カバーに覆われていますので、温度を保つことができます。
ただ、庫内の温度は、およそ40度ほどに保てますので、効果はあります。
ASAでプリント
プリントしてみると、こんな感じになりました↓。やや反りがありますが、先ほどより、かなり良いですね。
表面はややヨレている部分がありますが、いい感じになっています。
ASA-CFでプリント
続いてASA-CFでプリントしてみた結果は、こんな感じです↓。これも、かなり良い感じにプリントできています。ガタつきは、ほとんどありません。
表面もキレイに仕上がっています。
さきほどのASAと比較すると、ややカーボン入りの方が安定しているかなという感じですね。
ABS-GF25でプリント
続いて、ABS-GF25でも試してみたら、こんな感じになりました↓。こちらも同様に、かなり良い感じです。先ほどのASA-CFと同じくらいキレイに出来上がっています。
エンクロージャーがあるだけでも、かなり変わりましたね。
チャンバー有りでプリントした結果
ここでもQidi Plus 4 を使っていきます。
チャンバーを有効にすると、庫内は、高い温度を維持することができます。今回は55度に設定してプリントしていきます。
ASAでプリント
では、ASAからです。プリント結果はこんな感じになりました↓。
最初に試したオープンフレームタイプほどではありませんが、ちょっとだけ反っている感じがあります。
チャンバーがなかった方が、キレイにできていたように思います。
ASA-CFでプリント
続いて、ASA-CFです。これもやや浮いてしまいましたね。そのため、高さがズレて、表面の仕上がりが悪くなっています。
意外でしたが、チャンバーを使った方が、悪くなっています。温度が強すぎると、悪い方に作用することもありそうです。
形状によっても変わってくると思いますが、今回の場合で言うと、チャンバーをむやみに入れない方がいいかもしれません。
ABS-GF25でプリント
そして、ABS-GF25でも試しました。こちらは良い感じですね。
カーボンとグラスファイバーの違いがあるためか、やや違うようです。
寸法精度を確認した結果
続いては、このような40mm角のキューブをプリントしてきます。
3Dプリントした造形物は、寸法誤差が必ず発生します。カーボン有り無しの違いで、差が生まれるのかを見ていきます。
まずは、ASAフィラメントでプリントした結果です↓。X軸はおよそ39.87mmとなりました。-0.13mmです。
続いてY軸は、およそ40.1mmです。+0.1mmです。
最後はZ軸です。39.74mmでしたので、-0.26mmです。
こんな感じで、ASA-CFとABS-GF25も測定した結果がこんな感じです↓。
X軸(mm) | Y軸(mm) | Z軸(mm) | |
ASA | 39.87 | 40.1 | 39.74 |
ASA-CF | 40.17 | 40.28 | 39.74 |
ABS-GF25 | 40.19 | 40.27 | 39.77 |
● Z軸はどの樹脂でも少し小さめにプリントされています。これは樹脂の違いというより、3Dプリンターの構造上の問題な気がします。
● X軸・Y軸については、ASAを除いて寸法が太くなっているので、その辺りはカーボンやグラスファイバーの特徴かもしれません。
1個だけではなく、本来はたくさんプリントして、数値を平均した方がいいんですね。今後、そういったことも試していきたいです。
まとめ
ASA | ASA-CF | ABS-GF25 | |
オープンフレーム | × | × | △ |
エンクロージャー有り | 〇 | 〇 | 〇 |
チャンバー有り | △ | △ | 〇 |
寸法精度の違い | – | やや太め | やや太め |
● オープンフレームの3Dプリンターで試した結果は、通常のASA・ASA-CFともに収縮してしまいました。例えカーボンフィラメントを使ったとしても、それを大きく抑えられるわけではなさそうです。
今回の結果で言うと、ASAやABSカーボンを使う場合は、エンクロージャーが付いた3Dプリンターが良さそうです。