フィラメントを使っていると、こんな悩みが出てきませんか?
・ どうやって乾燥させるの?
結論から申し上げると、「フィラメント乾燥ドライヤー」を使うと効果的です。
フィラメント乾燥ドライヤーは、いくつかの種類があるのでどれが良いのか分からないという方もいらっしゃいます。
そこで本記事では「Tiertime製Filament Dryer PRO」という商品をレビューしましたので、ぜひ参考にして下さい。
吸湿するってどういうこと?
プラスチックのポリマーには、細かい空間が存在しますので、そこに水分が浸透することで吸湿します。
樹脂によって吸水率に違いがありますが、たとえばナイロンは、吸水率が1.0%~1.5%と高いため、対策は必須となります。
吸水率については、↓の表を参考にしてください。
フィラメント名 | 吸水率 | |
① | PVA | 30% |
② | ナイロン66 | 1.5% |
③ | ナイロン6 | 1.0% |
④ | エラストマー(TPU) | 0.7%~0.9% |
⑤ | ABS | 0.3%~0.7% |
⑥ | PLA | 0.3%~0.5% |
⑦ | PC | 0.15%~0.17% |
⑧ | PP | 0.01%~0.02% |
特にPVA(ポリビニルアルコール)は異常に吸水率が高い(30%)ため、そのまま放置してしまうと使い物にならなくなります。
「でもPAやPVAは使わないから、私には関係ないでしょ?」と思われるかもしれません。ですが残念ながらPLAやABSでも吸水してしまいます。
このように、何もしなくても吸湿してしまうので、対策がほぼ必須となります。
吸湿したまま使うとどうなる?
① 仕上がりが悪くなる
フィラメントがノズルから出てくるときに、「パチパチ」という音が鳴ります。
音だけであれば良いのですが、そういうわけにはいきません。水分が蒸発するので、瞬間的に樹脂が出てこなくなります。すると気泡が入った線になります↓
そしてこのまま造形をすると、プリントが途切れる箇所が生まれてしまいます。
当然、見た目が悪くなってしまいます。
② 強度が落ちる
そのままプリントすると、積層間の接着がとても弱くなってしまいます。
その結果、割れやすくなったり、劣化が早まったりするなどの問題が起きてしまいます。
Filament Dryer PROの仕様
価格を先に知りたいという方は、サンステラ、Amazon、楽天などで確認してみてください↓
① 基本スペック
項目 | 詳細 | |
① | 乾燥温度範囲 | 35℃~75℃ |
② | 連続乾燥時間 | 最大48時間 |
③ | 電源 | 100VAC |
④ | 対応樹脂 | ABS/PLA/TPU/PETG/Nylon/Desiccants/PVA/TPU/TPE/ASA/PP/HIPS/PC/PEEK |
最大75℃まで出力できるので、多くの樹脂に対応することができます。これは最大のメリットだと思います。
② サイズ・重さ(開梱前)
サイズ:37cm×31.5cm×38.5cm
重さ:4.5kg
③ 同梱品
本体はビニールに包まれています。
↓フィラメントチューブが付いているので、別途用意する必要がありません。
名称 | 備考 | |
① | フィラメントチューブ | フィラメントチューブをセットすると乾燥しながらプリントすることができます。 |
② | スプールアダプター | フィラメントをセットする際に使用します。 |
③ | シリカゲル | シリカゲルをセットすれば防湿することもできます。 |
④ | フィラメントコンテナ | 密閉できるフィラメント保管容器が1つ付いています。 |
Filament Dryer PROの構造
↓は乾燥機をセットアップした状態です。
外寸サイズは35cm(奥行)×26cm(幅)×32cm(高さ)で、重さは2.95kgとなっています。シングル乾燥機であるSUNLU FilaDryer S2が1.2kgなので、倍近くの差があります。
↓中は蒸し器のような構造になっていて、広い空間が確保されています。一番下には熱を発生させるヒーターがあります。
↓フィラメントを2個置くことができ、シリカゲルを置くスペースも確保されています。
↓フィラメントチューブを接続することで、乾燥しながら3Dプリントを行うことができます。
↓付属のフィラメントコンテナは、パッキンがついているのでしっかり密閉することができます。
↓操作パネルは、とてもシンプルな構成で、ボタンは軽く触れるだけで反応します。表示は「温度」か「時間」が表示されるようになっています。
Filament Dryer PROの特徴【4選】
① 出力温度が高い
最大75℃まで出力することができるので、高い乾燥・防湿効果を得ることができます。
また、扱えるフィラメントの種類が多いのも魅力です。PLAやABSはもちろん、PEEKというスーパーエンジニアプラスチックも対象となっています。
② フィラメントを2つセットできる
フィラメントを2つセットすることができます。
たとえば1つはプリントしながらも、もう一方では予備用フィラメントを乾燥させておくことができます。または、3Dプリンターを2台持っている場合は、乾燥ドライヤーを2台買う必要はありません。
ちなみに1,000gのフィラメントは2つ付けることができますが、2,000gや3,000gのフィラメントを使う場合は拡張キットが必要となります。
③ 乾燥剤を置くスペースがある
Filament Dryer PROは乾燥剤を置くことができます。
シングル乾燥機だと置けないタイプもありますが、このような専用スペースがあることで、落下の危険性がありません。ただし空間は広いので、シリカゲルを多めに置いたり、強力乾燥剤を使ったほうが良いでしょう。
④ 熱風による循環
熱風を発生させる装置によって、空気を循環させることができます。
水蒸気は外に排出されるの、水分を溜めにくくすることができます。
動作させてみる
例えばPLAであれば「45℃」を「3時間」ほど、ABSであれば「65℃」を「3時間」という具合に設定します。
↓試しにPLAで動作させて、中を覗いてみると温風が流れているのを確認できました。時間が経つと、自動的に停止します。
使ってみた感想
① 良い点
・ フィラメントを2つ設置できるので、乾燥効率が良い。
・ シリカゲルを設置するスペースがあるので、落下の危険性がない。
② 注意点
・ パネルが数値のみの表示。
また「強力乾燥剤」を併用するとさらに効果があるでしょう。
まとめ
今回ご紹介した乾燥機の特徴をまとめます。
特徴 | |
① | 2つのフィラメントを取り扱える |
② | 防湿・除湿の両方を行うことができる |
③ | 別でフィラメントコンテナが付属している |
④ | 最大75℃まで出力できるので、対応する樹脂が多い |
⑤ | 操作方法が非常にシンプル |
⑥ | 価格が少しお高め |
どこで買える?
安価なフィラメント乾燥機
選定ポイント
・ 「フィラメントが何個セットできるか」を確認すること。
・ 「シリカゲルを一緒に置けるスペース」があるかを確認すること。
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参考になれば幸いです。