これまでの3Dプリンターよりも、より「マルチ」な機器となっています。
この記事では、H2Dのたくさんある機能を、わかりやすく解説していきます。
H2Dってどんな機械?
H2Dは、以下のことができます。
・ 3Dプリント
・ マルチカラー3Dプリント
・ マルチマテリアル3Dプリント
・ レーザー彫刻
・ レーザーカッティング
・ デジタルカッティング
・ プロッティング(ペンを使った描画)
「3Dプリンター」と「レーザー加工機」「プロッター」が、合体したような機器です。
さらにおどろきなのが、価格です! これだけの機能が付いて、60万円弱で購入することができます。(レーザー版40Wの場合)
また、3Dプリンターだけのモデルもあります。これはのちのちレーザー加工をしたい方には、「レーザーアップグレードキット」を、後付けすることも可能です。
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どんな人が買い?
もし「3Dプリント、彫刻、プロッティング、デジタルカッティング」を外注していれば、これ1台で内製化することができます。
個別に機器をそろえると、予算が大きくなってしまいますので、これ1台で賄えるのは、とても大きなメリットです。
3Dプリントするだけの人にもオススメです! BambuLab製品は、3Dプリントの品質や使いやすさは、とても定評があります。
3Dプリンターの特徴【8選】
① 冷却・暖気チャンバー機能付き
H2Dは、冷却システム・暖気システムを搭載しています。
まず冷却システムですが、庫内には、このような大きい補助冷却ファンがついています。プラットフォームに冷気を送ることで、造形物の仕上がりが良くなります。
また、庫内温度を上げる必要がないPLAなんかは、前面と背面のフラップ部分を解放し、超強力な空気の循環を行います。
試しに冷却ファンを100%で動かしてみると、かなり強力で、音もすごかったです。手動で調整する必要はなく、フィラメントによって自動でオンオフしてくれます。
右奥のカバーを外すと、大きめの活性炭フィルターが装着されています。
微細な物質をフィルタリングしてくれますが、有害物質を完全に取り除くのは困難です。そのため、心配であれば、排気できるダクトを取り付けるといいです。
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MakerWorldでは、H2D用の排気ダクトのモデルがアップロードされています。
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続いてヒートチャンバーシステムです。H2Dは、庫内を最大65℃まで温めることができます。
チャンバー機能がオンになると、加熱モードに切り替わり、排気口とフロントの通気口が自動で閉じられます。
これで密閉され、熱が外に逃げにくくなります。ヒーターは右奥の下にあって、底の部分からゆっくりと温まっていきます。
このチャンバー機能を使えば、ABS、PC、PA6-CF、PPS-CFといった反りやすい素材も、安定してプリントできます。
関連記事:【PPS-CFフィラメント】スーパーエンプラを使ってみた結果!
② 大容量プラットフォーム
H2Dは、プラットフォームが最大「350×320×325mm³」まで対応しています。
シングルノズルでは、「325×320×325 mm³」。デュアルノズルでは、「300×320×325 mm³」のサイズまでプリントすることが可能です。
Bambulab P1Sでは、256×256×256mmでしたので、それと比較すると、かなり容量がアップしています。
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ちなみにレーザー彫刻エリアは、10Wで「310 mm × 270 mm」。40Wで「 310 mm × 250 mm」まで対応しています。
③ デュアルノズル機構
エクストルーダーは2つ搭載されており、違う樹脂(マルチマテリアル)を組み合わせたプリントができます。
これまでのBambulab製品では、1つのノズルで複数のフィラメントを切り替えていました。しかしその場合、フィラメント切り替えが長かったり、材料を試し出しする(パージ)のロスが、大きくなってしまうのがデメリットでした。
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ところがH2Dでは、それぞれのノズルに異なるフィラメントをセットしておくことで、プリント時間、消耗品のロスを減らすことができます。ちなみに、ノズルの高さは、過電流検知システムにより、全自動で合わせてくれます。
このオートオフセットキャリブレーションのおかげで、左右の誤差を減らし、あたかも1つのノズルでプリントしたかのような仕上がりになります。
デュアルノズルを使う場合は、どっちのノズルに、どの種類のフィラメントをセットするのかをBambuSlicerが案内してくれます。最初はちょっと分かりにくいですが、慣れると問題はありません。
ノズルの先端にはブロックが取り付けられています。これはフローブロッカーというもので、樹脂垂れを防ぎ、仕上がりを良くします。
自動で切り替えてくれるので、特に意識することはありません。
ノズルはクイックスワップ設計になっています。バックル部分を解除すれば、簡単に着脱することができます。他のBambulab製品にも採用されていますね。
標準で焼き入れステンレスノズルが装着されているので、カーボン系のプリントもOKです。ちなみに予備ノズルが1本同梱されていたのは、ちょっと嬉しかったですね。
ノズルクリーニングも充実しています。まずパージワイパー部は、ノズルから排出された不要な樹脂をカットし、外に吐き出します。
こんな感じのゴミが、プリンター背面側から排出されます。
またノズルワイパー部は、シリコンゴムをノズルに接触させ、ノズルの表面をキレイにします。
そして、プレートにある溝にノズルを接触させ、しっかり拭ってからプリントを開始します。
このように、クリーニングの仕組みは、かなり徹底してますね。
ちなみに左右のホットエンドは、同じものなので、互換性があります。
またH2Dのホットエンドを、A1シリーズに使うことができます。2台持ちの場合、互換性があって良いですね。
ただ、A1シリーズのホットエンドを、H2Dに使うことは推奨されていませんので、注意が必要です。。
④ 大流量ホットエンド
H2Dは、高流量でプリントすることが可能です。※ 高流量ホットエンドは別売り
流量の少ない3Dプリンターでは、スピードに対して、流量が追い付かず、欠損した層ができあがってしまいます。
H2Dの高流量ホットエンドを使うことで、高速で、安定したプリントをすることができます。
⑤ 炎検知センサー
H2Dには、炎検知センサーが搭載されています。
万が一、火災が発生した際には、プッシュ通知とブザーで知らせることができます。レーザー加工、レーザーカッティングを使うと、一時的に「火」や「煙」が出ますので、このような機能も必要です。
これまでの3Dプリンターでは、あまり無かった機能ですね。
またオプションで、自動消火システムを付けることができます。
炎検知センサーで、火を検知した場合は、消化を発動することができます。
安全性も考えられているため、ルールのきびしい企業でも、導入するきっかけになりそうです。
⑥ AI監視カメラ
H2Dはいくつかの監視カメラが取り付けられています。
ノズルカメラ
まずは「ノズルカメラ」です。その名の通り、ノズルの奥側に装着されています。
ノズルから排出される「押出パターン」を分析し、失敗に該当するかを判定します。この機能のおかげで、ノズル詰まり、スパゲティを検知することができます。
1080p、10FPSの性能があり、主にノズル詰まり、スパゲティ検出、空打ち(エアプリント)の検出をしてくれます。
ツールヘッドカメラ
続いて「ツールヘッドカメラ」です。エクストルーダーの横に取り付けられています。
このカメラでは、モーション制度キャリブレーション、ノズルオフセットキャリブレーション、ビルドプレートのコード認識に使われます。
つまり、キャリブレーション用のカメラのため、精度に関わってきます。もし汚れていたり故障すると、精度に落ちてしまうこともあります。
ライブカメラ
続いて「ライブカメラ」です。位置は手前の左側に取り付けられています。プラットフォームの全体を見渡せますので、タイムラプスや異物検知、ビルドプレート検知など、いろいろな役割があります。
また、ホットエンドノズルをこのカメラで検知し、ノズル情報を読み込むといったことも行っています。ノズル種類がスライスデータと一致しないと、警告が発信されるようになっています。
BirdsEYEカメラ
また、レーザー版のH2DLには「BirdsEYEカメラ」が取り付けられています。バードアイカメラは高い位置から造形エリアを撮影することで、精度の高い位置決めを行うことができます。
こんな感じで、H2Dはカメラを活用することで、失敗を減らす、精度を高めるといった効果を実現しています。
⑦ 失敗を防ぐセンサー機能
H2Dには36個ものセンサーが搭載されています。このセンサーで、さまざまな失敗などを検出します。
スパゲティ検出
スパゲティ検出とは、そのまま空中に書き続けてしまう症状です。原因は、1層目が定着しないなどですね。
もし症状が起きてしまった場合は、停止されます。センサー感度を変更することもできます。
パージシュート山積み検出
パージシュート山積み検出とは、パージされた樹脂のゴミが、外に排出されない場合に検知されます。
外に排出されずに引っかかってしまうと、樹脂のゴミが蓄積され、ノズル詰まりなどの原因になってしまいます。
ノズル詰まり検出
ノズルから樹脂が出ない場合に検知します。
もし検知されると停止状態になります。故障を防いだり、無駄なプリント時間を削減できます。
空打ち検出
こちらもノズルから排出されない場合に検知します。
ビルドプレート検出
ビルドプレート検出は、プレートの種類や位置を検出します。プレート上に異物がないかも検知して、故障を未然に防ぐことができます。
ドア開閉センサー
ドア開閉検知では、天板が外れていたり、フロントドアが開いていると検知されます。
開いている場合、通知のみを表示するか、プリント動作を停止するかを設定で変更することができます。
停止にしておくと事故を防ぐことができるので、安全性が高くなります。
⑧ AMS 2 Pro
AMSが進化し、「2 Pro」となりました。
そもそもAMSとは「自動フィラメント管理システム」のことで、以下のことができていました。
・ 複数フィラメントの切り替え
・ RFIDタグを使用した、パラメーターの同期
そしてAMS 2 Proでは、新たに以下の機能が追加されています。
・ 最大65℃までの昇温が可能
・ 換気システム搭載
・ 換気時間の自動設定
初代AMSでは、シリカゲル(乾燥剤)を使った乾燥機能しかありませんでしたが、AMS 2 Proでは、「乾燥ドライヤーの機能」が充実しています。
また、乾燥時間や温度は、フィラメントごとに異なりますが、それもRFIDを活用して自動制御できるようです。
そしてうれしいのが、AMS 2 Proは、すべてのBambulab製品で使うことができます。買いなおす必要がないのはうれしいですね。
AMS HTという、最大85℃まで温度を上げられる製品もあります。
H2Dでは、「AMS 2 Pro」4台と、「AMS HT」を8台組み合わせることで、最大24種類のフィラメントを使うことができます。
レーザー・プロッティングの特徴
① 全自動調整
3Dプリンターでも同様ですが、位置あわせは自動で調整してくれます。
レーザー彫刻機は、手動で高さ調整するものも多いですが、H2Dでは、自動でレーザー収束・素材測定が行われるため、手動調整の必要がありません。
人によるミスが起きにくいのはうれしいですね!
② 高出力 455nm レーザー
レーザーは、10Wもしくは40Wの半導体レーザーモジュールを搭載しています。
そのため、薄いものから、厚い素材まで彫刻をすることができます。
木材、ゴム、金属板、皮革、ダーク アクリル、石などの素材に対応しています。
③ エアアシスト
H2Dは、エアアシスト機能を搭載しています。
エアアシストは、レーザー経路を利用し、素材の表面を冷却します。それによりトップ面は、キレイで品質の良い仕上がりになります。
H2Dレーザー版では、エアアシストポンプが標準搭載されています。H2Dのみの場合、アップグレードキットを増設すれば利用可能です。
④ 非接触測定
H2Dは、非接触で対象物との距離を測定をすることができます。
対象物がキズつかなくて良いですね。
また、高度な光学式センサーで、曲面のある対象物でも高精度に読み取ることができます。
⑤ レーザーの安全性
H2Dの窓は、セーフティウィンドウになっています。
H2Dは、レーザー安全基準のクラス(レーザーモジュール)は「クラス4」となっているため、安全性を徹底しておく必要があります。
緑色のセーフティウィンドウがあるため、ゴーグルをしなくても良さそうです。
⑥ 空気清浄機
H2Dには、空気清浄機(オプション)を取り付けることができます。
レーザー彫刻やカッティングをすると、素材によりますが、臭いや有害物質が排出される場合があります。
空気清浄機を使うことで、より良い環境で、ものづくりをすることができます。心配な場合は、ぜひ活用したいところです。
⑦ Bambu Suiteで、シームレスに加工
H2Dでは、デザイン・レイアウトから、彫刻・加工まで、シームレスに行えます。
Banbu Suiteは、デザインやレイアウトが行えて、レーザーカット、ペン描画、ブレードカットをサポートしているソフトウェアです。
あらゆるプロセスを、まとめてできるのは便利ですね。
また、Bambu Suiteは、BirdsEyeカメラで撮った画像を使って、素材の使用量を最適化してくれます。
それにより、材料の無駄を、最小限に抑えることができます。
BirdsEyeカメラは、H2Dレーザー版に同梱されていて、H2Dのみでも、アップグレードキットを付ければ、利用可能です。
⑧ ロータリー アタッチメント
ロータリーアタッチメント(オプション)を使えば、円筒形状に彫刻することができます。
ボトル、水稲、タンブラー、花瓶、リング、ブレスレットといった、円状のものに使えそうですね。
スペック表
項目 | 詳細 |
造形体積 | シングルノズルの場合:325×320×325 mm³ デュアルノズルの場合:300×320×325 mm³ 2つのノズルの合計造形体積:350×320×325 mm³ |
筐体素材 | アルミニウム、スチール、プラスチック、ガラス |
レーザー安全窓 | レーザーエディションに装備。通常のH2Dはレーザーアップグレードキットで装着可能。 |
エアアシストポンプ | レーザーエディションに装備。通常のH2Dはレーザーアップグレードキットで装着可能。 |
製品寸法 | 492×514×626 mm³ |
重量 | 31キロ(総重量:H2D:38.5kg;H2D AMSコンボ:42.3kg; H2Dレーザーフルコンボ:46.2kg) |
ホットエンド | オールメタル |
押出機ギア・ノズル | 硬化鋼 |
最大ノズル温度 | 350℃ |
付属ノズル径 | 0.4mm |
対応ノズル径 | 0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mm |
ビルドプレート最大温度 | 120℃ |
チャンバー温度制御 | アクティブチャンバーヒーティング |
チャンバー最大温度 | 65℃ |
対応フィラメント | PLA、PETG、TPU、PVA、BVOH、ABS、ASA、PC、PA、PET、 炭素繊維/ガラス繊維強化PLA、PETG、PA、PET、PC、ABS、ASA、PPA CF/GF、PPS、PPS CF/GF |
ライブビューカメラ | 内蔵、1920×1080 |
ノズルカメラ | 内蔵、1920×1080 |
BirdsEyeカメラ | 内蔵、3264×2448(レーザーエディションに搭載) |
ツールヘッドカメラ | 内蔵、1920×1080 |
ドアセンサー | 〇 |
フィラメント切れセンサー | 〇 |
フィラメント絡みセンサー | 〇 |
フィラメントオドメトリ | AMS使用時に〇 |
停電復帰機能 | 〇 |
電圧 | 100~120 VAC 、50/60 Hz |