
柔らかい樹脂は、「シューズ」や「ドアストッパー」など使いどころは、たくさんあります。
今回は、柔らかい・硬いフィラメントを組合わせて、プリントしてみたいと思います。
今回使った機器・フィラメント
● 使用する3Dプリンターは、Bambulab H2Dを使います。
H2Dの詳しい情報はこちらの記事を参考にしてください↓
関連記事:BambuLab H2Dってどんな機械?
● 硬い方のフィラメント(リジットフィラメント)は「Bambulab ABS」を使います。
● 柔らかいフィラメントは「Bambulab TPU95A-HF」を使います。
TPU95A-HFの詳しい情報は、こちらの記事を参考にしてください↓
関連記事:【Bambulab TPU95A-HF】高速ゴム質/軟質フィラメントってどう?
今回のように組み合わせる場合は、この TPU95A-HFが推奨されています。
モデルはこんな感じのハンマー形状を使います↓。BambuStudioでTPUの部分と、ABSの部分をそれぞれ設定していきます。黒色がABSで、紫色がTPUになっています。

ここでポイントとなるのが、1層目に、ABSもTPUも両方存在している点です。
通常、ABSはプラットフォームの温度はおよそ100℃、TPUは40℃くらいなので、普通なら温度が違いすぎて、失敗しやすくなります。
H2Dの「2つのモード」を使い分けた場合、どうなるのかを見ていきたいと思います。
動画で見る
本記事は、動画で視聴することができます↓
TPUを組み合わせてプリントした結果
ABS+TPUでプリント
まずABS+TPUでプリントした結果です。1発目は、こんな感じで失敗してしまいました↓。

原因は定着温度不足ですね。1層目がテーブルにくっついていないと、剥がれてしまいます。
実はH2Dには、フィラメントを混在させる場合、「低温チャンバープリント」と「高温チャンバープリント」の2つのモードがあります。
● 低温チャンバーモード・・・プラットフォーム温度を低い方(TPU)に合わせてプリントするモード
● 高温チャンバーモード・・・プラットフォーム温度を高い方(ABS)に合わせてプリントするモード
今回は、TPUの方の温度に合わせる「低温チャンバーモード」で試したところ、失敗しましたね・・・。
では続いて「高温チャンバーモード」でプリントした結果は、こんな感じです↓。こちらはプラットフォームにしっかり定着しました。

とてもキレイにできました。糸引きも起きておらず、大丈夫そうです。
両方とも黒色なので、見にくくなっちゃいましたが、赤枠のところがTPUで、それ以外がABSです↓。

樹脂の継ぎ目はしっかりと密着しています。ただ、TPUの部分を強く押し込むと、「ミシッ」っという音がしました。

吸湿したTPUフィラメントを使うと、糸引きが起きてしまうので注意です↓。ちなみに、これも同じTPU 95A-HFです↓。

ですが、その場合でも乾燥ドライヤーをかければフィラメントは復活します。
H2Dには、乾燥ドライヤー機能があります。フィラメントにカバーを被せて、乾燥モードをスタートさせればOKです。

今回もTPUを9時間ほど乾燥させたところ、復活しました。

ただし、乾燥中はプリントすることができませんので、その場合は「AMS HT」という乾燥ドライヤーがおすすめです。最大85℃まで加温させることができるので、高温度帯のフィラメントにも対応します。
カーボン+TPUでプリント
続いて、PPS-CFとTPU 95A-HFを組み合わせてみたいと思います。

PPS-CFは、スーパーエンジニアプラスチックな上、カーボンが配合されています。ABS以上に高い温度が必要です。
あふぃ
ちなみにPPS-CFフィラメントについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください↓
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では、プリントした結果はこんな感じです↓。かなりキレイな仕上がりです。

今回は「高温チャンバープリントモード」でプリントしましたが、高温で変形している様子はありません。
通常、プラットフォームの温度は、TPU95-HFが35℃、PPSFが110℃で、およそ75℃の差がありますが、問題ありませんでした。
2つのモードについて
柔らかいフィラメントと硬いフィラメントを組み合わせる場合には、「2つのモード」を使い分ける必要があります。
低温チャンバーモード
1つ目は「低温チャンバーモード」です。これはヒートベッドの温度を、「柔らかい樹脂」の方に合わせてプリントするモードです。
今回だと、TPUなので40℃くらいですね。
このモードはどんな場合に使うかと言うと、1層目が「TPUのみ」で構成される場合に使います。
もし1層目に、ABSやPPS-CFが使われる場合には、温度不足により、さきほどご紹介したような定着不良が起きてしまいます。

高温チャンバーモード
続いて高温チャンバープリントです。これはビルドプレートの温度を高温フィラメント側に合わせます。
今回の例ですと、ABSだと90℃、PPS-CFが110℃となります。
このモードは、1層目に高温度帯フィラメントが多く使われる場合に効果があります。
プリント設定方法
ABSとTPU95A-HFを使って、高温チャンバーモードの設定をしていきます。
ツールバーの「組み立て」や「色塗り」を使って、ABSとTPUのプリント場所を設定しておきます。

「組み立て」「色塗り」の仕方については、こちらの記事も参考にしてください↓
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左上の下矢印をクリックし、設定を選択します。

「高温フィラメントと低温フィラメントの混合印刷の制限を解除します。」にチェックを入れます。

警告画面が表示されるので、「はい」をクリックします。これで混合プリントの制限が解除されます。

機種を選択しておきます。今回だとH2Dとなります。

「プリント情報の同期」をクリックします。「フィラメントの同期を続ける」をクリックします。すると、セットされているフィラメント情報を同期してくれます。

ただし、Bambulab以外、もしくはRFIDタグのないものは読み込めませんので、手動での設定が必要です。
ちなみに今回は、TPUを外付けの「乾燥ボックス」に入れ、ABSは「AMS2 Pro」にセットしています。

BambuStudioに戻りまして、ABSの横にある点々をクリックし、「編集ボタン」を選択します。

今回は、高温チャンバーモードで設定するので、プレートの温度が90℃になっていることを確認します。

様々なプレートの種類がありますが、初期のままであれば「PEIプレート」欄を確認します。。
チャンバーは使いませんので「0℃」に変更します。

「上書き保存マーク」をクリックし、ファイル名を変更します。「OKボタン」をクリックし保存します。

続いてTPU95A-HFの横にある「・・・」をクリックし、「編集ボタン」をクリックします。

プレートの温度を「90℃」に変更します。こちらも同様に、該当するプレート欄の温度を変更します。

「最大体積速度MVS」を「3.6」に変更します。これにより押し出し速度が低下します。

「保存マーク」をクリックします。任意のファイル名に変更します。「OKボタン」をクリックします。

続いてそのタブをクリック。「梁のインターロックを使用」にチェックを入れます。

このチェックを入れると、フィラメントの接合部を噛み合わせてくれますので、異なる樹脂が剥がれにくくなります。
そしてスライスをすると、左にABS、右のノズルにTPUをセットするよう、案内が表示されますので、セットします。

そしてプリントすると、先ほどのような感じでできあがります。





