
3Dプリンターでは、「反り・剥がれ・クラック・割れ・荒れ」といった症状が起きてしまうことがあります。
関連記事:テーブルから剥がれないようにする方法!剥がれる・浮く場合の解決方法!
対策方法はいろいろありますが、その中のひとつに「ヒートチャンバー」という機能があります。
今回は、ヒートチャンバーの検証を行います。
本記事でわかること
・ ヒートチャンバーの効力について
・ QIDI Plus 4のチャンバー情報
今回使用した3Dプリンター
今回は、QIDIテクノロジーから販売されている「QIDI Plus 4」という3Dプリンターを使います。
造形クオリティが高く、プリントエリアも広いので、業務用でも使うことができます。
関連記事:QIDI Plus 4ってどんな機器?低価格なのに業務用!?
QIDI Q2販売開始!
QIDI Q2は、QIDI Plus 4より、ややコンパクト設計になっていて、低価格で購入することができます。
ヒートチャンバーってなに?
ヒートチャンバーとは、「囲われた空間内を温度制御するシステム」のことです。

3Dプリンター庫内の温度を保つことで、あらゆる症状を緩和することができます。
QIDI Plus 4のヒートチャンバーは、温熱ファンで庫内を高スピードで温めることができます。

↑およそ8分程度で、65℃まで達します。
どうしてチャンバーを使うの?
剥がれ・浮き・反りを防止
3Dプリンターは、造形物がプラットフォームから造形物が剥がれてしまうことがあります。

その理由はいろいろとありますが、その中の一つに「冷えによる収縮」があります。
とくにABSやPCなどは、ノズルから排出された後の「冷え」によって、一気に収縮する力が強まります。

その対策として、庫内の温度を下げないようにするという方法があります。
庫内の温度を下げにくくするには、カバーに覆われたエンクロージャーのある3Dプリンターを使ったり、今回ご紹介しているチャンバーを利用します。

↑カバーに囲われている3Dプリンター
そうすることで、収縮を抑えることができ、反り・剥がれを防ぐことができます。
割れ・クラックを防止
収縮の影響により、積層間が割れてしまう場合があります。
これもABSやASAなどで起きやすく、同じく急速な「冷え」が原因となります。

そこで、エンクロージャーで覆いつつ、チャンバーを併用します。すると庫内温度を保たれ、樹脂の収縮を抑えることができます。
チャンバーの効果を検証!
縦に長い形状をプリントしてみる
最初は、このような縦長のモデルを使います↓。

インフィル(充填率)は80%と高めに設定しています。あえて収縮しやすくします。
関連記事:充填率(infill・インフィル)とは?
カバー(蓋)・チャンバーをしないでプリントした場合
最初は、上カバーをせずに、チャンバーもオフの状態でプリントしてみます。

結果はこんな感じです。早々に反りが発生したため、プリントを停止しました。

↑両端が反っています。最後までプリントしていたら、もっと症状が出ていたと思います。
カバー(蓋)だけをしてプリントした結果
続いて、蓋をした状態でプリントしてみます。QIDI Plus 4の天板はガラス製で重いので、しっかり温度が保たれそうです。

プリントを開始すると、庫内の温度は「51度」まで上がっていました。

チャンバーを使わずにここまで高温になったのは驚きました。私の経験では、40度から45度くらいが多かったので、ちょっとビックリです。これなら、チャンバーを使わなくても、ある程度のものは作れそうですね。
結果はこんな感じです↓。やはり難しい形状なので、両端がビルドプレートから少し浮いていますが、チャンバー無しで、ここまで抑えられているのはスゴイと思います。

以前、エンクロージャーのある、別の3Dプリンターでテストをしたところ、両端がかなり反ってしまったことがあります↓。

↑この時は、さらに糊を塗ったのですが、効果はあまりありませんでした。それと比べると、かなり進化したと感じます。
チャンバーをしてプリントした結果
では続いて、カバー(蓋)をした上で、チャンバーを65度に設定してプリントしてみます。
プリント結果はこんな感じです↓。かなり良いところまでいっていますが、どうしても少し両端が浮いてしまいますね。

ただ、チャンバー有りと無しを比べてみると、違いがあるように見えます。ある程度、チャンバーの効果はあるという結果になりました。

面積の広い形状をプリントする
続いて、ASAを使って、面積の広い形状をプリントしてみます。

ちなみに、ASAはABSと似た樹脂です。
ABSはアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンという3つの物質が組み合わされた樹脂ですが、ASAはアクリロニトリル、スチレン、アクリレートが使われています。
関連記事:【ASAフィラメント】失敗しないパラメーター!耐候性・強度の高い樹脂
両方とも、アクリロニトリルとスチレンが共通していますが、残りの1つはブタジエンの代わりに、アクリレートが使われています。そのため、ASAは紫外線による劣化を、防ぐ特徴があります。

ASAは、屋外での使用に向いているので、植木鉢やプランターを3Dプリントして、ベランダで使うのは良いと思います。

チャンバーをオフにしてプリントしてみる
まずは、カバーをせず、チャンバーをオフにした状態でプリントしてみます。今回はインフィルを15%でプリントします。
結果は、こんな感じです↓。パッと見た感じ良さそうですが、角の部分がやや浮いています。

↑加えて表面は、上に押し上げられているためか、横にはみ出ていて潰れ気味です。
平らなところに置いてみると浮いていますね。手で押さえるとガタつきがあります。全体に反っている感じがあります。

チャンバーをオンにしてプリントしてみる
では、続いてカバーをした上で、チャンバーもオンにしてプリントしてみます。
プリントした結果はこんな感じです。いい感じでビルドプレートに密着しているようです。浮きが少ないので、トップ面も押し上げが少ないですね。

平らなところに置いてみます。多少ガタつきますが、先ほどとは違って、反りが抑えられています。

比較してみる
では、表面の仕上がりを比べてみます。カバー・チャンバー無しの方は、こうやって比べてみると、かなり荒れています。

プラットフォームから浮いてしまうと、ノズルと接触してしまい、擦れた仕上がりになってしまいます。チャンバーをオンにすることで、効果があります。
実用的な形状をプリントしてみる
先ほどは極端な形状でテストしましたが、このような↓実用的な形状は、ABSやASAでもあまり不安なく作ることができました。トップ面の潰れなどはなく、かなりいい感じです。

こちら↓はABSです。これもかなりいい感じです。

一昔前の3Dプリンターだと、手動でZオフセット調整・パラメーター調整、反り対策をする必要がありましたが、QIDI Plus 4 は特に調整も不要で、初期のパラメーターで問題なく作れちゃいました。
3D Benchyはこんな感じ↓。これもASAを使っていますが、めちゃくちゃキレイでした。

ALL in oneベンチマークをプリントしてみたら、こんな感じです↓。特にオーバーハング部分がとても安定していました。垂れもなく、綺麗に仕上がっていました。

ブリッジ部のたわみも少なく、糸引きもほとんどありません。QIDI Plus 4は冷却力が高いので、それが影響していると思います。

また、今回使ったASAフィラメントも安い割に良かったです↓
サポート材を使ってプリントしてみる
続いては、サポート材を使ったモデルをプリントしてみます↓。

サポートの種類はオーガニック(ツリー)を選択します。ちなみに、それ以外だとグリッドやスナックを選ぶことができます。

出来上がったのはこちらです。キレイにできています↓

サポートを取り外していきます。QIDIスライサーのデフォルト設定でプリントしましたが、問題ないですね。サポート痕も問題なく、許容範囲内という感じです。

PLAでプリントしてみる
続いてPLAもプリントしてみます。
このようなボルトはスムーズに組み付けられて、クオリティが高いです。

糸引きなども特に起きていないです。こちらも安心して作ることができました。





