3Dプリンターは、本体・フィラメントの状態によって、クオリティが変わります。
そこで今回は、「Ocra Slicer(オルカスライサー)」を使った、キャリブレーションをする方法をお伝えします。
この記事で分かること
・ キャリブレーションの注意点
どの3Dプリンターで使えるの?
● Anker:M5、M5C
● Anycubic:i3 MegaS・chiron・Vyper・Kobra Max・Kobra Plus・4Max Pro・4Max Pro2・Kobra2
● Bambulab:X1 Carbon・X1・X1E・P1P・P1S・A1mini・A1
● Creality:CR-10 V2・CR-10 Max・CR-10 SE・CR-6 SE・CR-6 Max・Ender-3 V2・Ender-3 V2 Neo・Ender-3 S1・Ender-3、Ender-Pro・Ender-3 S1 Pro・Ender-3 S1 Plus・Ender-3 V3 SE・KE・V3・Ender-5・
Orca Slicerのダウンロードとインストール
Orca Slicerを使う場合は、「Git Hub」でダウンロードして、インストールをします。
GITHUB:ダウンロード
リンク先のページの一番下で、インストーラーをダウンロードすることができます。
Orca Slicerでキャリブレーションする必要性
ですが3Dプリンターは、個体差や、フィラメントの差は必ずあります。
結果的に、問題なくプリントできれば、する必要はありませんが、キャリブレーションをすることで、より「リアルな測定値」を得ることができるので、調子が悪い場合はやっておいた方が良いです。
Orca Slicerでは、以下の項目のキャリブレーションをすることができます。
・ 適正な流量
・ 適正なリトラクション(糸引き)
・ 適正なMVS(最大体積流量)
・ 適正な圧力テスト
① 乾燥ドライヤーでしっかり乾燥
まず、フィラメントドライヤーに入れて乾燥させます。
今回は、PETGフィラメントを使うので、およそ60℃で8時間かけて、しっかり乾燥させます。
今回は、温度に加えて、送風機能が付いているCreality Space P1を使いました。
フィラメントは、「Bambulab PETG-HF」です。高速プリント用PETGフィラメントです。
3Dプリンターは、Bambulab A1 miniです。
② 温度キャリブレーション
まずは温度調整をします。
この作業は、温度帯の違うパターンをプリントして、どの温度帯がキレイにプリントされているかを見ます。
画面左上にあるプリンターを選択します。今回はA1 mini 0.4mmノズルです。
Bambu PETG Basicを選択します。
「キャリブレーション」→「温度」を選択します。
「Temperature calibration」の画面が表示されるので、「PETG」を選択します。
PETG-HFの推奨温度は、230℃から260℃なので、「Start temp」を260度、「End temp」を230度に設定して、OKボタンをクリックします。
スライスすると、こんな感じ↓のタワーができます。画面右上の「配色スキーム」のプルダウンで、「温度」を選択すると温度別に表示されます。
プリントしてみるとこんな感じです。結構キレイにできていますね。
どの階層が一番キレイに出ているかを確認していきます。どれも似ていて甲乙つけがたいですが、今回は240℃をチョイスします。
Orca Slicerの「プリセットを編集」をクリックします。
「1層目」と「他の層」に240℃と入力します。
「保存」ボタンをクリックします。
「BambPETG-HF」といった感じで、好きなプリセット名称に変更します。OKボタンをクリックします。
③ 流量のキャリブレーション pass1
続いて、流量のキャリブレーションを行います。
ここが適正でないと、造形物が太ってしまったり、逆に細くなったりします。
関連記事:流量(FLOW・吐出量)とは?
流量のキャリブレーションは、二つの工程がありますので、まずは一つ目からやっていきます。
画面左上のファイルから「新規プロジェクト」をクリックします。
保存画面は「いいえ」を選択します。
パラメーターを引き継ぐかの確認画面が表示されるので、「破棄」をクリックします。
「キャリブレーション」→「Flow Rate」→「Pass1」をクリックします。
スライスをします。プレビューが表示されたら、「配色スキーム」で「流量」を選択します。
するとこのように、流量が違うサンプル(修飾子)が配置されます。
これをプリントしてみると、こんな感じになります。
これも温度の時と同じで、一番キレイに見えるものを選びます。どれも似ていて難しいですね。今回は「0」を選びます。
決まったら、「プリセットを編集」ボタンをクリックします。
すでに入力されている「流量比」の値を控えておきます。今回だと0.94です。
続いて、ちょっと面倒ですが、確認した値を式に入れて計算します。「Flow Ratio_old」にOrcaSlicerで確認した流量比の値を入れ、「modifier」にはプリントして確認した修飾子番号を入れます。
それぞれの値を入れ込むと、このような計算となり、今回だと0.94が算出されます。今回は、修飾子番号は0だったので、結果は変わりませんでしたね。
Orca Slicerの「プリセットの編集」をクリックします。
流量比に0.94という数値を入力します。
上書き保存をクリックします。
④ 流量のキャリブレーション pass2
続いて、流量キャリブレーションの2パターン目を行います。
画面左上のファイルから「新規プロジェクト」をクリックします。
保存画面は「いいえ」を選択します。
パラメーターを引き継ぐかの確認画面が表示されるので、「破棄」をクリックします。
画面上の「キャリブレーション」→「Flow rate」→「pass2」をクリックします。
すると、このようなモデルが配置されるので、スライスをします。右上の配色スキームを「流量」に変更します。
すると、それぞれの層が違う流量値になっていることが分かります。
プリントしてみるとこんな感じです。この中から一番綺麗に見える修飾子番号を選びます。今回は「-2」を選びました。
この式に値を入れて計算します。
一回目で算出した流量比と、今選んだ修飾子番号を代入します。すると、このような計算式になり、今回は0.9212となりました
フィラメントのパラメーター編集をクリックします。
流量比の値を0.9212に書き換えて上書き保存をします。
⑤ Pressure Advanceキャリブレーション
それでは、続いてPressure Advanceキャリブレーションを行います。
3Dプリンターでは、エクスとルーダーが加速や減速をした時に、圧力の差で線の太さが変わってしまうことがあります。
この調整では、圧力の違うパターン線を何本も引き、その中でどれが一番キレイな線になっているかを選びます。
画面左上のファイルから「新規プロジェクト」をクリックします。
保存画面は「いいえ」を選択します。
パラメーターを引き継ぐかの確認画面が表示されるので、「破棄」をクリックします。
画面上の「キャリブレーション」→「Pressure advance」を選択します。
PA Calibrationが表示されます。「PA Line」を選択します。OKボタンをクリックします。
プラットフォームに「PAテスト」と表示されるので、スライスボタンをクリックします。
右上の配色スキームのプルダウンを「速度」に変更すると、プリント速度を変化させていることが分かります。
実際にプリントしてみるとこんな感じです。ちょっと見にくいかもしれませんが、線が太っているところや、細くなっているところが確認できます。
この中からキレイな横線になっているところを見つけ、その値を確認しておきます。
では、Orca Slicerの「プリセットを編集」をクリックします。
「Enable Pressure Advance」にチェックを入れ、先ほど確認したPressure Advanceの値を入力します。
上書き保存をします。
⑥ MVSキャリブレーション
続いて、MVSのキャリブレーションを行います。
このMVSの値が多すぎると、吐出量が追いつかずに失敗したり、逆に少なすぎるとプリント時間が長くかかってしまいます。
高速用フィラメントを使うのであれば、これは適正に設定しておきたいところです。
画面左上のファイルから新規プロジェクトをクリックします。
保存画面は「いいえ」を選択します。
パラメーターを引き継ぐかの確認画面が表示されるので、「破棄」をクリックします。
画面上の「キャリブレーション」→「More」→「 MAX Flowrate」を選択します。
Start Volume Tex Speedを10にして、End Volume Tex Speedを30にします。OKボタンをクリックします。
モデルが配置されるので、スライスボタンをクリックします。配色スキームのプルダウンを「速度」や「流量」に変更すると、速度や流量が変化しているのが分かります。
それではプリントしていきます。下の層の速度は遅く、上の層に行くほど速くなり、吐出量が追いつかなくなります。
プリントした結果はこちらです。下の層は問題ないですが、上の層では樹脂の供給が追いつかずに欠損していたり、ヨレていますね。
ノギスや定規を使って、「底面から状態の良くないところまで」の長さを測っておきます。仕上がり重視にしたいので、安定しているところまでの長さを測っておきます。
続いて、この式に値を入れていきます。まず、先ほどOrcaSlicerで入れた、「スタート時の速度値」及び「ステップ値」を代入します。続いて「ノギスで測った長さ」をHeight Measureに代入して計算します。
すると計算結果は25となります。
OrcaSlicerのプリセットの編集をクリックします。
一番下にある最大体積速度を25に書き換えます。上書き保存をします。
ただ、25の値でプリントしてみるとヨレが発生してしまいましたので、最大体積速度を20に再変更しています。
キャリブレーション作業は以上となります。
最後に
ちなみに、今回実施した手順については、キャリブレーションチュートリアルからアクセスすることができます。
今回行ったこと以外にも、糸引き対策用にリトラクションや寸法精度を確認する項目もあります。
ぜひ一度、試してみてください。