ラフトが造形物から剥がせない場合の対処方法

PCラフトから剥がす

ラフトが剥がれにくくなってしまい、困っていませんか?

 

ムリヤリ剥がそうとすると、割れてしまったりケガをしてしまうことがありますので注意が必要です。

 

私は、いろいろなメーカーの保守・サポートを行ってきましたが、対処を間違えるとなかなか解決できません。

 

そこで本記事では、考えられる「対処方法」や「回避策」などをご紹介しておりますので、ぜひ参考にしてください。

 

 

対処方法・回避策

では早速ですが、対処方法・回避策を「5つ」ほどご紹介致します。

 

お使いのプリンターに違いはあると思いますので、似た項目がないかを確認してみてください。

 

1. ラフトとの距離を増やす

1つ目は「ラフトとの距離を増やす」です。

 

モデルとラフトとの間には「距離」が存在します。これがないとお互いが完全にくっ付いてしまい、剥がすことができません。

 

最近のスライサーソフトでは、距離を調整できるようになっています。ソフトによって名称はバラバラですが、たとえば「ラフト間のラップ」や「モデルとラフトの距離」などのように表記されています。

ラフト間のラップ調整画面

 

以下は、極端な例ですが「0.3mm」と「3mm」で比較した写真です。距離がある方が剥がしやすくなります。

モデルとラフトの距離

 

ではどれくらいの値にしたらいいの?ということになりますが、これはフィラメントによって異なります以下に例を記載しておきます。

・PLA:0.15mm~0.2mm
・ABS:0.15mm~0.2mm

・PC:0.15mm~0.3mm
・PETG:0.18mm~0.3mm

 

値を増やせば剥がしやすくなりますが、1層目が荒れてしまう可能性もでてくるので、やりすぎに注意しましょう。

 

【関連記事】  底面の仕上がり・剥がれをラフトで改善【Ender-3 S1】

 

2. 初期レイヤーの流量を下げる

2つ目は「初期レイヤーの流量を下げる」です。

 

初期レイヤーとは、モデル部の最初の層にあたります(ラフトの最初の層ではありません)。また流量とは、ノズルから出る樹脂の量のことです。

Ender-3 S1_0.25mmノズル

 

つまり最初の層の流量を減らすことで、ラフトとの密着力を減らせることができます。結果的に剥がしやすくなります。

 

これも、スライサーソフトで調整を行います。表記名はソフトによって違います。たとえば流量は「フロー」や「吐出量」、初期レイヤーであれば「最初の層」といったワードが使われています。

初期レイヤーのフロー

 

【関連記事】  流量(FLOW・吐出量)とは?

 

3. 初期レイヤーの押出幅を下げる

3つ目は「初期レイヤーの押出幅を下げる」です。

 

押出幅とは、プリント線の太さのことです。初期値であれば0.4mmになっているかと思いますが、この値を下げることで細い線にすることができます。

 

たとえば、0.4mmから0.36mmに変更することで、0.36mm幅のプリント線になります。

 

またソフトによっては、パーセンテージ(%)で設定を行います。たとえば0.4mmを100%としているので、0.48mmにしたければ、120%と設定します。

押出幅の違い

 

今回のように線を細くしたいのであれば「90%(0.36mm)付近」などにすると良いでしょう。

 

【関連記事】  ライン幅(押出幅)とは?

 

 

4. 樹脂フィラメントを変える

4つ目は「樹脂フィラメントを変える」です。

 

フィラメントによっては、くっつきすぎてしまうものがあります。調整をすれば剥がすことができますが、面が荒れやすくなります。

ラフトが取り切れずに割れる

 

たとえば向いていないフィラメントは、以下のものがあります。

・ TPU(エラストマー)
・ PP(ポリプロピレン)
・ PA(ナイロン)

・ PETG

 

また、向いているフィラメントは以下のものがあります。

・ PLA(ポリ乳酸)
・ ABS

 

【関連記事】  【初心者必見】PLA樹脂フィラメントとは?おすすめの商品もご紹介

 

5. ラフトを使用しない

5つ目は「ラフトを使用しない」です。

 

身も蓋もない話に聞こえてしまうかもしれませんね。ですが近年ではラフトはあまり使わない傾向になっています。そもそもラフトを使う理由としては、以下のものがありました。

 

① 定着力を高めるため
② 平面をつくるため
③ テーブルから剥がす際、スクレーパーで作品にキズをつけないため

 

たとえば①の「定着力を高めるため」については、シートや糊(のり)などの進化で解消されてきています。もちろん条件によって剥がれてしまうことはありますが、一昔前よりは各段に良くなっています。

 

【関連記事】  【3Dプリンター】おすすめのスティックのりはどれ?

 

また②の「平面をつくるため」についてですが、近年では「オートレベリング機能」が搭載されたものが主流です。これは「高さセンサー」によって、テーブルの状態を測定し、ソフト的に補正してくれるものです。

Ender-3 高さセンサー

 

つまりこの機能のおかげで、平面に近い状態を算出してくれるので、わざわざラフトで平面を作らなくても大丈夫ということです。とはいえテーブル上のキズまでは補正してくれませんので、ケースバイケースと言うことになります。

 

③の「スクレーパーで作品にキズをつけないため」についてですが、近年ではフレキシブルプレートが主流となっています。つまりテーブルを曲げることができるので、楽に造形物を剥がすことができます。

Ender-3_S1_フレキシブルプレート

 

とは言え、PC(ポリカーボネート)などはテーブルに張り付いてしまうことがあります。フレキシブルプレートでも剥がれないことがあるので、スクレーパーは1本あると良いです。

 

【関連記事】  オススメするスクレーパーの選び方【3Dプリンター】

 

以上3つの理由から、昔よりもラフトを使う場面が減っています。状況によってうまく使い分けられると良いでしょう。

 

ラフトってどんなときに使うべき?

出番が減っているラフトですが、どんな時に使うのが良いのでしょうか?

 


1. 仕上がりが悪いとき

「しっかり調整したはずなのに」「どこにも問題はないのに」と思っていても、うまくいかないのが3Dプリンターです。それはいろいろな要因が考えられます。たとえば・・・

 

・ 使う環境
・ フィラメントの状態
・ モデルの形状

 

などの影響をうけます。

 

温度・湿度」や、「フィラメントの吸湿状態」、「モデルにの形状の違い」によって仕上がりが変わることがあります。特に日本は四季がありますからね。

 

つまりうまくいかない場合には、ためしにラフト使ってみましょう。実際に、お客様ごとに仕上がりが変わったというケースは、何度も経験しました。

 

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2.コピー・ミラー造形を使うとき

あまり聞きなれない言葉かもしれません。商用の3Dプリンターでは「コピー造形、ミラー造形」ができる機械があります。

 

たとえばRaise3D E2は、「同じものを同時にプリントする機能」があります。

Raise3D E2 ミラー造形

 

この場合、右と左のノズルは「Z軸の誤差」が必ず生じます。つまり「左右のノズルの高さって、ちょっとだけ違うよね」ということです。そこでラフトを使うことで、その誤差は緩和されます

 

ちょっと分かりにくかったでしょうか? 特殊なパターンなので、参考程度になってくれれば幸いです。

 

【関連記事】  【レビュー】Raise3D E2とは?低価格のデュアルノズル3Dプリンター

 

ラフトを剥がすときの注意点

最後に、注意点を「2つ」ご紹介します。

 

安全に作業をするのは、とても大切なことです。とくに企業として取り組んでいる場合は、なにより優先しましょう。

 


1.グローブをしましょう

カンタンに剥がれれば良いのですが、そうでないとどうしても強い力を入れてしまいます。

 

樹脂は硬いものが多いので、とても危険です。ケガをしないように、作業時は必ずグローブをするようにしましょう。

 


2.ゴーグル・メガネをしましょう

こちらも顔や目の安全を考慮し、ゴーグルやメガネをして作業を行いましょう。

 

まとめ

 項目 対処方法
1 対処方法・回避策 1.ラフトとの距離を増やす。
2.初期レイヤーの流量を下げる。
3.初期レイヤーの押出幅を下げる。
4.樹脂フィラメントを変える。
5.ラフトを使用しない。
2 ラフトってどんなとき使うべき? 1.仕上がりが悪いとき。
2.コピー造形をするとき。
3 ラフトを剥がすときの注意点 1.グローブをすること。
2.ゴーグル・メガネをすること。

 

関連記事について

今回は「ラフトと造形物」を剥がしやすくする方法についてまとめましたが、「造形物とプラットフォームテーブル(ベッド)」を剥がしやすくする方法についてもまとめています。

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