3Dプリンターのフィラメントとは?

この記事について 【3Dプリンターのフィラメントとは?

この記事では、FDM方式の3Dプリンターで必ず使用されるフィラメントについて解説しています。近年では、多種多様なフィラメントが販売されています。触ったこと事が無い方でも、分かりやすく解説しようと思います。

 

フィラメントとは?

それは、造形に必要な材料のことです。

 

「フィラメント (filament)」 とは、「糸状」を意味します。

 

紙に印刷する2Dプリンターで言うと、トナーやインクのような物です。
3Dプリンターでは、必ず必要な備品になります。

 

下の左図のようにボビンにフィラメントが巻き付けてあるタイプが一般的です。
右図は、カートリッジタイプで、機械専用のフィラメントになります。

 

フィラメントは、本体の横や後方・または上部などにセットします。
下図は、向かって右側面にセットするタイプとなります。(Raise3D Pro2の例)

 

樹脂について

この項は難しい用語など出てきますので、流し読みで問題ありません。

 

樹脂には大きく分けて「天然樹脂」と「合成樹脂」に分けることが出来ます。

「天然の樹脂」となります。

樹脂に含まれる、揮発しない物質のことを指しており、例えば「松脂(まつやに)」や「漆(うるし)」などが該当します。使われ方は塗料や接着剤などに使われることが多いです。

 

「人工的に生成された樹脂」となります。

3Dプリンターのフィラメントのほとんどは、こちらの「合成樹脂」に分類されます。

合成樹脂は、石油を精製することで分離して得ることのできる「ナフサ」が原料となっています。このナフサを精製することで「モノマー」が生成されます。
またの名を「単量体」とも言われます。
※よく聞くモノマーの例として、「エチレン」「スチレン」「プロピレン」などがあります。

その「モノマー」を加熱や加圧などで結合させることで「ポリマー」となります。
またの名を「重合体」と言います。
※よく聞く「ポリエチレン」や「ポリスチレン」「ポリプロピレン」などの合成樹脂となります。

 

また合成樹脂は、「熱可塑性樹脂」(ねつかそせいじゅし)と「熱硬化性樹脂」(ねつこうかせいじゅし)に分別することができます。

「熱を加えるとやわらかくなる樹脂」のことです。

イメージはし易いかと思いますが、チョコレートのように熱を加えると溶け、冷やすと固まります。

FDM方式の3Dプリンターは、この樹脂の特性を活かしています。
 
「熱を加えると硬くなる樹脂」のことです。

一度熱を加えて固くなると、柔らかくならない特性があります。
「耐熱性」や「硬度」が高いことから電気系部品にも使用されています。
しかし、熱溶解による再利用が難しい樹脂と言われています。

熱硬化性樹脂の例としては「エポキシ樹脂」や「ポリウレタン」「メラミン樹脂」などがあります。
 

プラスチック樹脂の種類について

3Dプリンターで使用するプラスチック合成樹脂の種類について解説します。種類は多数存在し、大きくは3種類に大別することができます。この3種類で、よくに焦点になりやすいのが「耐熱温度」の違いです。

  1. 汎用プラスチック
  2. エンジニアプラスチック
  3. スーパーエンジニアプラスチック

 

耐熱温度とは?

耐熱温度は、「連続使用温度」を指すことが多く、何も力を加えずに「継続的に使用できる温度」を指します。工業製品等では、より商品に近い樹脂で造形したいというニーズがあり、自然と耐熱温度が高い物が求められます。

近年では、スーパーエンジニアプラスチックのニーズも高まっています。

 

汎用プラスチック

それでは、3種類のプラスチックについて例を挙げます。

 

<耐熱温度が100℃未満のプラスチック>

  1. ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)
  2. PP(ポリプロピレン)
  3. PE(ポリエチレン)
  4. PMMA(アクリル樹脂)
  5. PVC(ポリ塩化ビニル)

 

エンジニアプラスチック

<耐熱温度が150℃未満のプラスチック>

  1. PC(ポリカーボネート)
  2. PA(ポリアミド)
  3. POM(ポリアセタール)
  4. PPE(ポリフェニレンエーテル)
  5. PET(ポリエチレンテレフタレート)

 

スーパーエンジニアプラスチック

<耐熱温度が150℃以上のプラスチック>

  1. PPS(ポリフェニレンサルファイド)
  2. PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)
  3. PEI(ポリエーテルイミド)
  4. PES(ポリエーテルサルフォン)

 

各樹脂の特徴について

FDM方式の3Dプリンターを使用する際の各樹脂の特徴は下記の通りです。
樹脂毎の詳細は、樹脂名をクリックしてください。

  項目 ABS PLA PP PC PETG TPU PA 木質
1 全体的な造形のし易さ
2 テーブルの定着性
3 他の樹脂との相性 × ×
4 後加工のし易さ
5 匂いの無さ
6 湿気に対する強さ ×
7 価格
8 強度
9 耐熱温度

 

樹脂でよく使う用語について

フィラメント樹脂で「耐摩耗性」や「耐候性」などの「耐~性」という言葉がよく出てきます。樹脂業界では当たり前のことかとは思いますが、詳しくない人が聞くと何それ?となります。下記によく出る用語・意味をまとめましたので、ご覧ください。

関連記事

この記事について 【3Dプリンターでよく使う樹脂性質の用語集】 3Dプリンターはあらゆるプラスチック樹脂を使用しますので、「耐摩耗性」などの意味を理解しておく必要があります。 この記事では用語を極力分かりやすく解説していますので、[…]

polymaker_pla

 

MSDS・SDS(安全データシート)について

各フィラメント樹脂の製品は、メーカーからMSDS(Material Safety Data Sheet)が発行されています。またの名を「SDS」と言ったり「安全データシート」とも呼ばれます。

 

MSDSとは、簡単に言うと「その製品を安全に取り扱う為の情報文書」です。化学物質や商品・製品をどのように扱わなければならないか等の必要な情報がまとめられています。

 

PRTR法では「第一種指定化学物質」「第二種指定化学物質」が含まれる物質にはMSDSを発行する事が義務化されています。よって樹脂フィラメントも例外ではなく、メーカーにて発行されています。

 

主に下記のような内容を公開しています。

<製造元情報>
製造会社、連絡先、担当者

<不慮の事態発生時の対応方法>
目に入った場合、皮膚に触れた場合、吸い込んだ場合、飲み込んだ場合、火災、漏出時の措置等

<物質情報>
物質の匂い、危険度、輸送時、廃棄時の注意点等

<使用環境>
喚起の有無や、下水道に流していいか等

 

PolymakerさんでもMSDSを公開しており、「使用する際の環境の確認」や「保管方法など」は参考にするべきです。
PolymakerさんのMSDS公開サイト

企業で取り扱う場合は、設置環境や保管方法、危険度を把握するのに必要な文書となります。

 

色について

下図、Polymakerさんの例

 

フィラメントで最も使われる色は白や黒ですが、1色ではなく赤・青・緑・黄色・紫などの多様な色が販売されています。

 

色の選択は、造形したあとに何に使うかによって決まります。
業務向けであれば、試作が多い為「白や黒・グレー等」がよく使われます。また、クリア(透明)のニーズもある程度多いですが、FDM方式で完全に透明するのは難しい状況です。
近い素材では、PP(ポリプロピレン)やPMMA(アクリル樹脂)・PCが半透明で造形出来ます。

 

また、カラー色に関しては少し注意が必要です。なかなか売れない場合やメーカーの都合等の理由により、愛用していた製品の供給がストップする場合があります。過去の販売実績や評判・販売元などを確認するようにしましょう。

 

サイズ・容量について

フィラメントサイズ(輪切りにした場合の直径サイズ)は、1.75mmと2.85mmの2種類存在します。
日本では、1.75mmの方が流通が多くなっています。

 

メーカーを選ばなければ、インターネットで2.85mmも購入することが可能です。
購入する際は、間違い無いよう注意しましょう。

 

容量は、物によって1巻あたり1000gや700gなどのバラツキがあります。
なので、価格を比較したい場合は、グラムあたり(または100グラムあたり)何円というような形で試算すると良いでしょう。

 

品質について

同じ樹脂でも含有成分に違いがあるため、メーカー・商品によって品質のバラツキがあります。ご使用の3Dプリンターに推奨のフィラメントがある場合は、それを使用するようにしましょう。

 

また、同じノズルで様々なメーカーのフィラメントを使用するのはお勧めしません。多様の樹脂・成分がノズル内に残ってしまい、フィラメント詰まりの原因になります。主要のフィラメントが決まったら、あまり変えずに造形するのも一つの方法です。

 

 

造形のプロセス

フィラメントは、どのように使用されるのかを簡単にご説明いたします。

 

一般的な、FDM方式の3Dプリンター構造は下記の通りです。

  1. 3Dプリンターの上から「フィラメント」を挿入します。
  2. 「送りギア」によって、フィラメントが下へ送られます。
  3. 「ヒートシンク」部分は、冷やす部分です。ある程度冷えている事で、フィラメントの硬さが維持されます。それにより、ギアによって下へ送られます。
  4. 「ノズルヒーター」は、熱を発生させる部品です。この熱をノズルにも伝え、フィラメントを軟化させます。その後、テーブルへ塗り付けられます。
  5. 排出されたフィラメントは、外気に触れることで、一気に固まります。
  6. これを繰り返すことで造形物が出来上がります。

 

まとめ

例えば、ABSという樹脂だけを見てもメーカーや成分・使いやすさなどが異なっています。安いからと言って安易に購入すると失敗することもあります。購入前には評判などを確認するようにしましょう。

 

各樹脂には「耐衝撃性」や「耐摩耗性」などの特性があります。これらの基本的な用語の意味や樹脂の例をまとめていますので、合わせてお読みください。

関連記事

この記事について 【3Dプリンターでよく使う樹脂性質の用語集】 3Dプリンターはあらゆるプラスチック樹脂を使用しますので、「耐摩耗性」などの意味を理解しておく必要があります。 この記事では用語を極力分かりやすく解説していますので、[…]

polymaker_pla

YouTubeで、本ブログの内容を分かりやすくを解説しています

 

3Dプリンターを、どれにするか迷っていませんか?

 

Bambulab A1 miniは、間違いなくおすすめできる3Dプリンターです↓

業務用・サイズの広いものなら「P1S」↓