木質(木目調)フィラメントについて、このような疑問はないでしょうか?
・ オススメ商品はどれ?
本記事では、このような疑問にお答えしています。
私自身は、3Dプリンターの保守・サポートのお仕事をしておりますので、このような経験が参考になれば幸いです。
木質(木材/木目調)フィラメントとは?
木に近い質感をしており、赤っぽいものもあれば、黒っぽいものといった具合に、さまざまな色の商品が販売されています。主に以下の2種類に分類されます。
① 木の成分が入っているもの
1つ目は「木の成分が入っているもの」です。
木の成分を混ぜているので、リアルな匂いや質感を表現することができます。100%木材ではなく、PLAとの混ぜものになります。ノズル詰まりしやすいというデメリットがあります。
② 木の成分が入っていないもの
2つ目は「木の成分が入っていないもの」です。
木の成分は入っていないため「見た目を似せたもの」になります。プリントがしやすく、失敗も少ないというメリットがあるので、見た目を重視するときに使います。
木質フィラメントの各特徴
フィラメントのメーカーによって、違いがございますので、予め認識した上でご覧ください。
1.造形のしやすさについて
結論を先に申し上げると、以下の3点を抑えておけば使いやすい樹脂です。
② 糸引きに注意。
③ ラフトは使わない。
順番にご説明します。
① ノズル詰まりに注意
PLAと比べると「ノズル詰まりしやすい」です。
木の成分が含まれているため、これがコゲとなり経路をふさぐ原因となります。
対処方法は、以下の3つがあります。
1点目は「 径の大きいノズル」を使うことです。一般的には0.4mm径を使いますが、詰まってしまう場合は、0.6mmを使うことをオススメします。また0.2mmなどの小さいノズルは使わない方が賢明です。ノズルはAmazonでも安く販売されています。→ Creality MK8ノズル24個3Dプリンター真鍮ノズル
2点目は「樹脂を混在させない」ことです。種類をとっかえひっかえすると、ノズル内で不純物が溜まっていき、ノズル詰まりが起きやすくなります。複数台所持したり、ノズルを使い分ける必要があります。近年ではプリンターも安価に買うことができます。→ Creality Ender-3 S1 3Dプリンター【Amazon】
3点目は「 PLA100%を使う」方法です。故障をさけたいのであれば、詰まりにくいPLA100%のフィラメントを使うようにしましょう。→ Polymaker 3Dプリンター用木質調フィラメント PolyWood 1.75 mm
② 糸引きに注意
「糸引きが発生しやすい」です。
糸引きとは、くもの巣のような症状のことを指します。
対策はいくつかありますので、詳細が気になる方はこちらをご覧ください。→ 【解決法】糸引きが起きる原因はなに?防止・処理方法
③ ラフトは使わない
ラフトを使うと「剥がせなくなる」ことがあります。
もちろん調整すれば剥がせますが、樹脂同士の接着力が強いため、仕上がりに影響がでやすいです。無理に剥がそうとすると↓のように割れてしまうことがあります。
ちなみにラフトがうまく剝がせない場合の対処方法はこちらを参考にしてください。→ ラフトが造形物から剥がせない場合の対処方法
2.仕上がり具合について
木というだけあり「あたたかみのある仕上がり」になります。以下のようにほっこりできるので、個人的にはとても好きです。
また、ノズル詰まりを防止するために0.6mm径を使うことをオススメしてます。ですがそれにより見た目に影響がでます。たとえば以下のように、造形線の見え方が変わります。
また、このフィラメントに限った話ではありませんが、積層ピッチを変えることによって見え方が変わります。以下のように横から見ると粗さが違うことが分かります。
3.テーブルの定着性について
定着性は特に問題はありません。PLAと似た感覚で使うことができますので、正しいキャリブレーション・調整が行えれていれば問題ないでしょう。
ただし、木材の含有量が多いフィラメントは、剥がれやすくなることがあります。調整をキツ目にするかノリを活用する良いです。
「剥がれにくくする調整のコツ」は、こちらにまとめていますので、参考にしてください。→ テーブルから剥がれないようにする方法!剥がれる・浮く場合の解決方法!
4.他の樹脂との相性について
他の樹脂との相性は、あまり良くありません。そのため専用のサポート材を使うことは、ほとんどありませんが、PLAの含有量が多い場合は、使用することができます。
また、違う色のPLAを組み合わせて2色プリントをする手法もありますが、このあたりは取り扱うフィラメントが大きく影響しますので、実際に試すと良いでしょう。
2色造形のやり方は、こちらも参考にしてください。→ 2色造形のやり方・注意すること
5.加工のしやすさについて
木材ということもあり加工はしやすいです。たとえば「ヤスリがけ」をすると、以下のように表面をキレイに仕上げることができます。
ところが、PLAの含有量が多いフィラメントは、ヤスリがけに向いていません。そのため表面の様子を見ながら研磨することをオススメします。
また、空研ぎで研磨すると熱が発生したり、削り粉が目に入りこんでしまいます。そのため耐水ペーパーを使うと良いです。ためしに使ってみたところ、思っているよりも吸水しませんでした。
耐水ペーパーは、いろいろなサイズが入ったものがオススメです。
6.匂いについて
プリント中は匂いがします。ですがそこまでイヤな感じではなく、線香花火をやっているときの匂いに似ています。またPLAは少し甘い匂いがします。
ですが、苦手な人もいらっしゃいますので、換気などに配慮しましょう。3Dプリンターの置き場所に関しては、こちらの記事を参考にして下さい。→ 【重要】3Dプリンターの理想的な置き場所・環境
7.湿気について
湿気にはあまり強くありません。そのため、フィラメントをむき出しの状態で使っていると、仕上がりに影響することがあります。たとえば、プリント中に「パチパチ」と音がするのは、水分が蒸発している証拠です。その結果、以下のように穴が開いたような仕上がりになります。
フィラメントを開封したあとは「フィラメントドライヤー」に入れたり、ボックス内に「強力乾燥剤」を入れておくととても効果的です。
8.価格について
PLAと同様に安価です。20%~40%の木部繊維が混ぜこまれたラインナップが多く販売されています。1KGあたり2,000円台~6,000円で購入することができ、業務用であれば5,000円~8,000円です。
9.強度について
強度はあまり高くありません。力を加えたときは、PLAと似ており「パキッ」という割れ方をします。ためしにフィラメントを強めにひっぱってみると、比較的簡単にちぎれます。
強度の上げるには、以下の方法があります。
・ インフィルの密度を増やす。
詳しくは、本記事では説明しませんが、気になる方はこちらもご覧ください。→ とにかく頑丈なものを造形する5つのコツ
いろいろ作ってみた
① 船(ベンチマーク用)
1つ目は「船(ベンチマーク用)」です。
↓は木質(左)とABS(右)の比較ですが、木のほうが温かみがあり、おもちゃ感が強いです。
また↓は底面から見たところです。これは0.6mmノズルでプリントしたものなので、線が目立ちます。押出幅をしぼれば、もっとキレイに見せることもできます。
② ねこ(4色)
2つ目は「ねこ(4色)」です。
すべて木質調フィラメントでプリントしましたが、明るさや色味がそれぞれ違いますよね。4色が少しずつ入った商品が販売されていますので、お試し用に便利です。
③ 犬
3つ目は「犬」です。
モデル設計を工夫すれば、↓のように曲げることができます。積み木のおもちゃでありそうですね。
まとめ
項目 | 詳細 | |
1. | 木質フィラメントとは? | 質感や見た目が、木材のような材料のこと |
2, | 木質フィラメントの特徴 | ① 造形しやすさ: 3点に注意する。 ② 仕上がり: 温かみがある。 ③ テーブルの定着性:特に問題なし。 ④ 他の樹脂との相性:良くない。 ⑤ 加工のしやすさ: 加工しやすい。 ⑥ 匂い: 匂いがする。 ⑦ 湿気: 湿気に弱い。 ⑧ 価格: 安価。 ⑨ 強度: あまり高くない。 |
3. | いろいろ作ってみた結果 | 温かみがあり、多様な色を取り扱うことができる。 モデル設計によっては、曲げたりすることも可能。 |
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