ゴムフィラメント(TPU・TPE・エラストマー)の失敗しない選び方【初心者おすすめ】

ゴムフィラメント(TPU・TPE・エラストマー)の失敗しない選び方【初心者おすすめ】

ゴムフィラメントってどれを選んだらいいか分からない」というお悩みはないでしょうか?

 

PLAやABSと違って「柔らかさに種類」があります。

 

ここを理解しないままプリントすると、失敗しやすくなったり仕上がりが悪くなってしまいます。

 

そこで本記事では「失敗しないフィラメントの選び方」「知っておくべきこと」をまとめています。

 

プリント成功のヒントになれば幸いです。

 

また、動画でもご覧になれます↓

 

ゴム系フィラメントは2種類ある

ゴム系フィラメントは、大きく「2種類」に分けられます。

ゴム系フィラメントの失敗しない選び方_basf ultrafuse TPU85A HPフィラメント

 


① TPU(熱可塑性ポリウレタン)

1つ目はTPU(熱可塑性ポリウレタン)です。

ゴム系フィラメントの失敗しない選び方_polymaker TPU95A

 

弾力性があり、摩耗に強く、丈夫な素材です。たとえばボール、スポーツウェア、水着、ケーブルの保護カバー、シューズ、医療品などに使われています。

 

この特性は、3Dプリンターとの相性が良いため、失敗しにくい材料と言えます。

 


② TPE(熱可塑性エラストマー)

2つ目はTPE(熱可塑性エラストマー)です。

ゴム系フィラメントの失敗しない選び方_ホッティポリマー HPフィラメントTPE 60A

 

TPUよりも柔らかさを求める場合に使われます。伸縮性があり、手触りがとても良いため工具のグリップ部やキーボードのキーキャップ、ハンドル部などに使われます。

 

TPUよりもコシが弱いため、3Dプリントの難易度は上がります。

 

ゴムフィラメントを扱う上での「3つ」の注意点

以下の「3つ」の注意点を理解しておきましょう。

 


① ノズル詰まりが起きやすい

ゴムは、ノズル詰まりが起きやすいフィラメントです。

ゴム系フィラメントの失敗しない選び方_ノズル詰まりがおきやすい

PLAやABSであれば、経路にちょっとしたゴミがあっても、フィラメントの「強いコシ」によって強引に搬送することができます。※もちろん全てではないですが。

 

ところがTPUはコシが弱いので、推進力が低いです。そのため経路にゴミなどがあると、詰まりやすくなります。

ゴムフィラメントの選び方_コシが弱い

 

つまり柔らかいフィラメントほど、詰まりやすくなるということになります。

 


② 座屈が起きやすい

座屈とは、搬送している途中でフィラメントが屈折(湾曲)してしまうことです。

ゴムフィラメントの選び方_座屈・屈折・曲がる

 

症状がおきる原因は、以下の「3つ」が考えられます。

 

<① ルート上やノズル内にゴミやコゲがある>

ルートの清掃やノズルの交換などの対処をしましょう。

 

<② プラットフォームとノズルが近すぎる>

Z軸のキャリブレーションや、スライサーソフトで高さ調整をしましょう。

 

<③ スライサーソフトで調整しきれていない>

速度を遅くしたり、リトラクト量を減らすなどの対処をしましょう。

 


③ 柔らかさによって、クオリティは変わる

柔らかいフィラメントほど、プリントする形状によってクオリティが下がります。

 

以下の写真のように、オーバーハングがある形状は、クオリティが低くなる傾向があります。※これはTPE(熱可塑性エラストマーの硬度60A)の例です。

ゴムフィラメントの選び方_TPE60A、柔らかさによってクオリティが変わる

 

これは樹脂の収縮が原因ではなく、柔らかさゆえに、その上に乗っかる部分が不安定になってしまうためです。

 

一方で、オーバーハングの無い形状であれば、問題なくプリントすることができます↓

ゴムフィラメントの選び方_試験棒製作

 

比較・検証する

ここからは硬さの違うフィラメントを使って、どのような違いが起きるかを比較していきます。

 


以下の「4つ」のフィラメントを使います。

 

① BASF Ultrafuse 64D

今回の中では最も硬いTPUフィラメントです。

BASF Ultrafuse TPU 64Dフィラメント

 

② Polymaker TPU95A

TPU95Aはバランスが良く、ゴムと言えばこれというフィラメントです。流通量は最も多いです。

 

③ BASF Ultrafuse TPU85A

TPU95Aよりもやや柔らかいTPUフィラメントです。

Ultrafuse TPU 85A フィラメント (750g / フィラメント径:1.75mm)

 

④ ホッティポリマー HPフィラメント 60A

今回の中では最も柔らかいTPEフィラメントです。

 

以上の「4つ」のフィラメントを使って、比較をしていきます。

 


1.温度・速度の比較

まずは、温度や速度の比較表です↓ ※ Raise3Dの速度を参考値としております。

ノズル温度(℃) テーブル温度(℃) 造形速度(mm/s) 備考
Ultrafuse 64D 230 30~40 35
PolyFlex TPU95A 225 20~40 35
Ultrafuse 85A 215 20~40 40
HPフィラメント 60A 235 0 20~30 養生テープ使用

 

全体的にプラットフォームの温度は低く、あまり違いはありません。速度はABSやPLAよりも遅く設定されています。

 

またHPフィラメント60Aは、プラットフォームに養生テープを張り、定着力を上げる必要があります。

 


2.価格の比較

価格は以下の通りです。※改定することがあるので、参考程度でお願いします。

・ BASF Ultrafuse 64D :7200円/750g
・ Polymaker TPU95A :7400円/750g
・ BASF Ultrafuse 85A :7200/750g
・ HPフィラメント 60A :15000円/500g

 

上記はいずれも商用プリンター向けのフィラメントです。家庭用向けも販売されていますので参考にしてください↓

 


3.柔らかさの比較

それぞれのフィラメントで試験棒を作って、比較します。これはぜひ動画を見て頂きたいです

ゴムフィラメントの選び方_試験棒作成

 

1.BASF Ultrafuse 64D

手で曲げることはできますが、やや力が必要です。

ゴムフィラメント_試験棒を曲げる

 

試験棒を振ってみると、まったくと言って良いほど揺れません↓

BASF Ultrafuse 60Dで作った試験棒の揺れ方

 

2.Polymaker TPU95A

TPU95Aは、TPU64Dよりは楽に曲げることができます。

ゴムフィラメントの選び方_TPU95Aの曲がり方

 

こちらもTPU64Dよりは振れますが、振れ幅はほとんどありません。

ゴムフィラメントの選び方_TPU95Aの振れ幅

 

3.BASF Ultrafuse TPU85A

TPU85Aは、簡単に曲げることができます。数値以上に柔らかいと感じました。

ゴムフィラメントの選び方_TPU85Aの振れ幅

 

振ってみると「ふにゃふにゃ」という感じです。95Aよりは60Aの方に近いと思います。

ゴムフィラメントの選び方_TPU85Aの振れ幅

 

4.ホッティポリマー HPフィラメント 60A

力をほとんど加えなくても曲がります。

ゴムフィラメントの選び方_ホッティポリマーHPフィラメント60Aの振れ幅

 

振ってみると「ぷるぷる」という感じです。振れ幅はとても大きいです。

ゴムフィラメントの選び方_ホッティポリマーHPフィラメント60Aの振れ幅

 


4.クオリティ(仕上がり)の比較

↓のモデルをプリントし、硬さによってクオリティがどれくらい違うのかを比較します。

ゴムフィラメントの選び方_オーバーハングテストモデル

 

1.BASF Ultrafuse 64D

もっともキツイ傾斜(80℃)では、樹脂垂れが起きていますね↓

ゴムフィラメントの選び方_オーバーハングテストモデル_64D

 

2.Polymaker TPU95A

こちらも、64Dとあまり変わらないですね。80℃付近で垂れが起きています。

ゴムフィラメントの選び方_オーバーハングテストモデル_TPU95A

 

3.BASF Ultrafuse TPU85A

TPU85Aでは、より柔らかくなっているためか、60℃~70℃付近で垂れが起きていました。

ゴムフィラメントの選び方_オーバーハングテストモデル_HPフィラメント60A

 

4.ホッティポリマー HPフィラメント 60A

これは30℃くらいから影響がではじめていました。オーバーハングのある形状は難しいです。

ゴムフィラメントの選び方_オーバーハングテストモデル_HPフィラメント60A

 

まとめ:ゴムフィラメントの選び方

ご紹介したとおり、柔らかいフィラメントほど形状を選びます。

 

そのため「求めている柔らかさ」と「実際のクオリティ」をうまく天秤にかける必要があります。

 

特徴 該当商品/
商品リンク(Amazon/SK本舗)
とりあえず失敗を少なくしたい。
硬めでもいいから形を評価できれば良い。
BASF Ultrafuse 64D
クオリティ、硬度はそこそこ。
ラインナップが多いので商品を選ぶことができる。
Polymaker TPU95A
クオリティはやや下がる。
かなり柔らかい。
BASF Ultrafuse 85A
プリントする形状をしっかり吟味する必要がある。 HPフィラメント 60A
とりあえず安価に購入したい。 SUNLU TPU フィラメント

 

YouTubeで、本ブログの内容を分かりやすくを解説しています

 

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