HPフィラメント(すごい柔らかいゴム)を試した

スーパーフレキシブルフィラメント

この記事について
【HPフィラメント(すごい柔らかいゴム)を試した】

今回は、ホッティポリマーさんのHPフィラメント(またの名をスーパーフレキシブルタイプ)を試しました。
購入前などの参考になれば幸いです。

 

  • どんな商品?
  • 実際に造形した内容
  • 造形をしてみてわかったこと

 

 

今回の製品について

改めて、今回テストしたのはホッティポリマーさんが生産しているエラストマーフィラメントです。
HPフィラメント(スーパーフレキシブルタイプ)という商品で、硬度が60度の超軟質エラストマーです。

 

メイドインジャパンというのがいいですね。

 

硬度について

今回のHPフィラメントは、簡単に言うと「すごい柔らかいゴムフィラメント」のことです。

 

PolymakerさんからTPU95のフィラメントが販売されていますが「95°」は硬めのゴムです。
一方、今回試したHPフィラメントは「60°」の硬度ですので、非常に柔らかいゴムということになります。

 

一般的に、柔らかければ柔らかいほど、造形の難易度は上がります。

 

というのもフィラメントは、ある程度の「コシ」がないと詰まりが起きやすくなります。
そのため、60°のフィラメントが使えることはすごいことなのです。

 

まずは使用条件を確認していきたいと思います。

 

使用条件

すごく柔らかいゴム系フィラメントのため、使用時の制約はいろいろあるようです。

 

  • 速度20mm/s以下、場合によっては10mm/sにする
  • 速度変更できるスライサーソフトを使用する。
  • 送りギアとヒーターが離れすぎていない機械を使用する。
  • ノズルは他の樹脂が残っていない状態にしてから使用する。

 

また、動作確認が取れている機械を推奨されています。

  • MakerBot社:Replicator2
  • FLASHFORGE社:Creator Pro、Finder
  • Raise社:Raise3D

 

ゴムフィラメント選び方は↓の動画も参考にして下さい。

 

実際に造形

今回は、推奨されている機械の一つである「Raise3D E2」で造形しました。
この機械では、0.4mmノズルでも今回のフィラメントが使えるようです。

 

使用するパラメーター

念のため、パラメーター条件を記載します。

ノズル径 0.4mm
積層ピッチ(レイヤーの高さ) 0.2mm
速度 20mm/s
ラフト 無し
スカート 有り(1周)
ベッド温度 40℃
ノズル温度 235℃

 

造形①

まずは、下記のような簡易的な形状を造形してみました。

スーパーフレキシブルフィラメントで造形

 

ところが、1層目の定着が弱く、剥がれてしまいました。※画像取り忘れました。

 

そこでいろいろと情報を探していると、「養生テープ」をプラットフォームに貼って造形すると良いようです。
養生テープとは、引っ越し等で使うテープです。

 

実際試してみたところ、問題なく定着してくれました。

フレキシブルフィラメントで猫を造形

 

また造形後は、定着していた場所が少し浮くことがあるので、毎回交換したほうが良さそうです。
養生テープはコスパが良いので助かります。

養生テープの浮き

 

造形②

次にタイミングベルトを造形したところ、綺麗にできました。
TPUタイミングベルトを造形

この形状は、サポート材やオーバーハング部もないため、特に問題なく造形できました。

 

かなり柔らかい上、強度も高かったので普通に使えそうです。

ゴムの柔らかさ

ですがこの後、強く引いたら切れました。

 

切れた原因は、造形開始地点を「固定」にしてしまったためです。
※固定にすると各層での開始地点が一緒の場所になるので、その部分が弱くなります。

 

強度を出す場合は、造形開始地点を「ランダム」などに変えた方がよさそうです。

 

造形③

下記のような部品とのクッション部材(緩衝部材)を造形しました。

HPフィラメント_クッション部材

硬度が柔らかいため、部品との間に使用すると非常に効果的だと思います。

 

今後も、使わせていただきたいと思います。

 

造形④ ※難易度高め

これだけ柔らかいフィラメントを0.4mmノズルでも問題なく出力できることに驚きましたが、今回はあえて難しい造形にチャレンジしてみます。

 

先に断っておきますが、フィラメント自体は非常に高品質なものです。
どこまでやれるのかを興味本位でやっています^^

 

モデルは下記のようにオーバーハング部とサポートが存在するものを作成しましたので、造形していきます。
フレキシブルフィラメントでオーバーハング部

 

造形結果は下記のようになりました。

 

まずは、上から見た写真です。

フレキシブルフィラメント反り

角の部分がとくに「反り」が見られました。
非常に柔らかいので、オーバーハング部は反る特徴がありました。

 

下記は横から見たところです。

フレキシブルフィラメントの反り

また、反った部分にノズルが過剰接触し、ジャミングの症状も見られました。

 

一般的にフレキシブルフィラメントでは、ノズルの排出口が塞がりかかると、フィラメントが経路内で屈折をすることがあります。※これをジャミングといいます。

 

ちなみにジャミングが発生すると、エクストルーダーの中でフィラメントが「ぐにゃっ」っとした感じになります。
この場合は、ギアの圧着をゆるめて、フィラメントをちぎらない様に抜き取ります。

ジャミングした状態

 

次に横から見たところです。

フレキシブルフィラメント横からみたところ

オーバーハング部の層の積み重ねが荒くなっています。

 

最後に下から見た写真です。

フレキシブルフィラメント下から見たところ

サポート部をピンセットで取ってみたところ、簡単に除去することが出来ました。

 

造形してみて分かったこと

実際に造形してみて、感じたことをまとめます。

 

<使い道が広がる>

ここまで柔らかいフィラメントは今のところないので、簡単に3D化できるのはかなり魅力的だと感じます。

 

次は手が触れる「クッション材」なども作ってみたいと思います。

 

<プラットフォームの定着に注意する>

養生テープを使用することで定着は良くなりますが、大きい造形物の場合は剥がれることがありました。

 

そのため、大きい形状には注意が必要です。

 

<形状に左右される>

単純形状であれば問題ありませんが、複雑な形状は仕上がりが良くない場合があります。

 

形状をよく観察してから使用することが非常に重要となります。

 

まとめ

項目 説明
HPフィラメントとは? エラストマーの中でも60°の柔らかいフィラメント
使用条件 ・速度を遅くする(10mm/s)
・推奨機械を使用する
・ノズル内をきれいにしてから使用する
など
感じたこと ・使い道が広がる
・プラットフォームに養生テープを使用すると良い。
・複雑形状には向かない
・サポートは極力つけない(置き向きを考える)

 

今回試した商品について

 

おすすめ記事

今回は、スーパーフレキシブルフィラメントをご紹介しましたが、そもそもエラストマー樹脂とはどのようなものでしょうか?

下記に特徴などをまとめています。
関連記事

  この記事について 【TPEフィラメントの特徴】 近年では、FDM方式の3Dプリンターでもエラストマー(ゴム系)フィラメントを使用した造形が可能となっています。   パッキンやスマホカバー等で幅広く[…]

 

YouTubeで、本ブログの内容を分かりやすくを解説しています

 

3Dプリンターを、どれにするか迷っていませんか?

 

 Ender-3 V3 SEは、FDMをこれから始める方にはおすすめできる3Dプリンターです。