積層痕とは?滑らかに見せる5つのコツ

みなさんは積層痕が、気になることはありますか?

 

FDM方式の3Dプリンターは、積層痕のせいで、見栄えが悪くなることがあります。

 

今回は、積層痕を解決する方法なども解説していきます。

 

この記事で分かること

・ 積層痕ってなに?
・ 積層痕は、なぜできてしまうの?
・ 積層痕を、キレイに見せるコツ

 

私自身、3Dプリンターの保守やサポートのお仕事をしておりますので、その経験が参考になれば幸いです。

 

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本記事の内容は、動画でもご覧になることができます↓

 

積層痕とは?

積層痕とは、造形するプロセスで生まれる「層の痕跡(こんせき)」のことです。

 

造形物を横から見ると、地層のように積みあがっている様子がうかがえます。この層を「積層痕」と呼びます

積層痕の見え方

 

特にFDMと呼ばれるプリント方式は、積層痕が目立ちやすいです。たとえば下の写真は、異なる方式でプリントしたものですが、滑らかさに違いがあることが分かります。

FDMと光造形の違い

 

ちなみに光造形は、光にあてることで硬化する液体」を使いますので、層が滑らかになります。また粉末積層と呼ばれる方式は「」を焼結してプリントしますので、見え方がまた異なります。

 

3Dプリンター方式 積層痕の仕上がり
FDM方式 荒い
光造形方式 滑らか
粉末積層方式 比較的滑らか

 

3Dプリンターに精通している方であれば、作品を見るだけで「どの方式で作ったか」や「どの置き向きで作ったか」「どれくらいの調整値で作ったか」などが分かるようになってきます。

 

 

積層痕が生まれる仕組み

積層痕は、層を積み上げることで生まれます。

 

まさに地層のように、地面から順番に線を積み上げていきますので「層のつぎ目」が際立ちます。

積層の積み上がり方

 

プリンターによって違う!積層の細かさについて

プリンターによって違う!積層の細かさについて」を解説します。

 


3Dプリンターは、どの方式でも必ず積層痕が存在します。その中でも目立たない方式のプリンターもあります。

積層痕

 

例えば光造形機は、「層の厚みを薄くすることができる」3Dプリンターです。材料はレジンという光で固まる液体を使います。液体ということもあり、一層あたりの厚みを薄くすることができます。

光造形機3Dプリンター、レジン補充

 

それにより、層があることを感じさせないくらい滑らかな積層になります。細かいディテールを表現したい場合は光造形機がおすすめとなります。

 

 

また、粉末造形液の場合は、樹脂にレーザーを照射することで固めていきます。光造形機よりも層は目立つものの、かなり滑らかな層となります。ただ、価格が高く、業務向けのみで販売されています。

3Dプリンター、粉末造形機

 

そして、熱溶解積層(FDM)方式は痕が目立ちやすい方式です。そこで、この後では解決方法をご紹介します。

 

積層痕を滑らかに見せる7つのコツ

ここからは、滑らかに見せるコツを、7つご紹介します。

 

積層ピッチ(レイヤーの高さ)の値を下げる

1つ目は「積層ピッチを薄くする」方法です。

 


3Dプリントをする際は、「1層あたりの厚みを薄くする」と滑らかな積層となります。

 

たとえば下の写真は、0.1mm~0.4mmの積層ピッチで、プリントしたものです。比較をするとよく分かりますが、0.1mmは積層痕があまり目立たないことが分かります。

積層ピッチごとの積層痕の見え方の違い

 

また、これはピッチ0.4mmでプリントしたものですが、層がはっきりと確認できます。キレイにプリントできていますが、積層が目立ちますよね。

積層痕_ピッチを滑らかにする_0.4mmピッチ

 

これは、テッペンから取ったものです。円状のラインが目立ちます。

積層痕_ピッチを滑らかにする_トップ面

 

そして今回は、0.04mmという超極薄の積層ピッチでプリントしてみます。

 

ただ、0.04mmピッチだと、0.4mm系のノズルではバランスが悪いので、0.2mm系のノズルを使います。

積層痕_ピッチを滑らかにす_0.2mmノズル

 

0.2mmノズルは、多くの3Dプリンターで、オプションとして用意されているので、手が出しやすいです。

 

では、プリントしてみた結果がこちらです。どうでしょうか? 積層痕は、ほとんど見えなくなりました。相当滑らかなので、めちゃくちゃキレイに見えます。

積層痕_ピッチを滑らかにす_0.04mmピッチ

 

上から見るとこんな感じです。円状の跡がほとんど見えなくなりました。0.2mmノズルは造形線が細いので、その効果もあります。

積層痕_ピッチを滑らかにす_0.04mmピッチトップ面

 

これは、めちゃくちゃキレイになったのでびっくりしました。

 

↓こちらは、0.4mm系のノズルで、0.08mmピッチでプリントしたものです。これでも全く問題ないですね。

積層痕_ピッチを滑らかにす_0.08mmピッチトップ面

 

0.04mmと比べてみると、0.08mmの方はうっすら円形状が見える感じです。

積層痕_ピッチを滑らかにす_0.08mmピッチ比較

 

ただ、このやり方の問題点は、「長いプリント時間が必要になる」点です。

 

このモデルを0.2mmノズル、0.04mmピッチでプリントすると、3時間51分かかりました。

積層痕_ピッチを滑らかにす_プリント時間が長い

 

一般的な設定だと41分でできてしまうので、それと比べるとちょっと長すぎますね。

 

そこで、「可変積層ピッチ」という機能を使うと、プリント時間を短くできます。この機能については↓の記事をご覧ください。

関連記事:Bambu Studioの基本操作・使い方・機能・ダウンロード

 

可変積層ピッチを使った場合、およそ2時間27分となりました。結果的に、1時間以上のプリント時間を短くすることができました。

積層痕_ピッチを滑らかにす_可変積層レイヤーのプリント時間

 

では、「すべての層を0.04mmでプリントしたもの」と、「可変積層ピッチでプリントしたもの」を見比べてみます。

積層痕_ピッチを滑らかにす_可変積層レイヤー比較

 

ほとんど違いがないように見えました。可変レイヤーの方は、どの層が厚めなのかも分からないほどです。

 

続いてトップ面です。こちらもほとんど違いはありませんが、やや左の方が滑らかです。

積層痕_ピッチを滑らかにす_可変積層レイヤー比較

 

こんな感じで、可変レイヤーを利用すると「仕上がりを良くして、プリント時間を短くすることができる」のでオススメです。

 

② 目立たない色を使う

2つ目は「積層痕が目立たない色を使う」方法です。

 


今までたくさんの作品を見てきましたが、使うフィラメントの色によって、見え方はかなり違います。

 

以下の写真は、すべて0.4mmの積層ピッチでプリントしたものです。みなさんはどの色が一番キレイに見えますか?

積層痕の色による見え方の違い

 

多くの方は、「グレー」や「青」の積層痕が目立ち、「白」や「黄」はあまり目立たないように見えるのではないかと思います。

 

これは↓、青と黄色の比較ですが、青色の方が積層ラインが目立っているように見えませんか?

黄色と青のフィラメント、色の比較

 

また、上から見るとこんな感じです↓。こちらも同様に、黄色の方が目立っていません。目立たせたくない場合は、このような「明るい色」を使うといいです。

黄色と青のフィラメント、色の比較

 

もし、誰かに作品を見せる時は、色を選定すると、評価が良くなるかもしれませんね。

 

今回、上記で使ったPLAフィラメントは「Bambulab PLA ベーシック」です↓。

 

③ 目立たない樹脂を使う

3つ目は「目立たない樹脂を使う」方法です。

 


近年の3Dプリンターは、さまざまな樹脂を使えるようになってきました。フィラメントを変えるだけで、見え方が全く異なります。

 


カーボンフィラメント

たとえば以下の写真は、異なる樹脂で造形したものですが、カーボンの方は積層痕がボケていることが分かります。

PLAとカーボンの見え方の違い

 

またこちらのモデル↓でも、積層ラインがあまり目立っていません。PLAと比べてみても、見え方に違いがありますね。

積層痕(レイヤーの高さ)_PLA+カーボン比較

 

横からよりも、トップ面から見た方が、違いがよくわかります↓。

積層痕(レイヤーの高さ)_PLA+カーボントップ面

 

ちなみにカーボンフィラメントは、軽量なわりに強度が高いという特徴があります。そのためラケットやゴルフクラブなどのスポーツ用品に多く使われていますね。

 

ただ、カーボンフィラメントを使う場合は、「ノズルの材質」に注意してください。

 

一般的な「真鍮製」だと、すぐに削れてしまいます。そのため、焼き入れステンレスなどの硬化ノズルを使うようにしましょう。

 


木質フィラメント

 

また下の写真は、木質のフィラメントを使ってプリントしたものです。PLAやABSのようなプラスチック感は全くなくなりますので、子供用のおもちゃなんかには良さそうですね。

木目調フィラメントで造形

 

こちら↓も、PLA+木質フィラメントでプリントしたものです。PLAよりは、若干ですがレイヤーが見えにくくなっています。

積層痕(レイヤーの高さ)_木質木粉フィラメント

 

木質フィラメントにも色の種類があります。私は4色が少量ずつセットになった商品↓を購入して、仕上がりの違いを比較していました。

 


シルクフィラメント

続いては、シルクフィラメントです。シルクフィラメントは、光沢が強いのが特徴です。特に見栄えを気にしたい場合に効果的です。

 

ベースはPLAなので、プリントに失敗することもあまりありません。

 

積層を見てみると、光沢の影響でラインが目立ちにくくなっています↓。

積層痕(レイヤーの高さ)_シルクフィラメント(青)

 

普通のPLAと比べてみると、光沢量の違いが大きいですね↓。

積層痕(レイヤーの高さ)_シルクフィラメントとPLAの比較

 

より目立ちにくくしたい場合は、明るめの色を選ぶのがおすすめです。

 


大理石フィラメント

続いて、代理石フィラメントです。あまり馴染みのないフィラメントかもしれませんが、ベースはPLAです。

 

横から見ると、こんな感じです↓。黒いツブツブが混ぜ込まれていて、マーブル調の模様になっています。

積層痕(レイヤーの高さ)_大理石PLAフィラメント

 

通常のPLAと比較すると、かなり滑らかに見えます。

積層痕(レイヤーの高さ)_大理石PLAフィラメント、PLAとの比較

 

こちらはトップ面から見たところです↓。全く目立っていません。結果的に、この代理石フィラメントが、今回の中で一番良かったです。

積層痕(レイヤーの高さ)_大理石PLAフィラメント、PLAとの比較上から見たところ

 

見た目重視という方は、ぜひこの大理石フィラメントを使ってみてほしいです。

 

④ ファジースキン(Fuzzy Skin)を利用する

4つ目は「ファジースキン機能を利用する」です。

 

ファジースキン(Fuzzy Skin)とは、「外壁を波状の線でプリントすることで、テクスチャー模様に仕上げる」機能です。

 

↓の画像をよく見てもらうと、表面が波打っているのが分かります。

積層痕の解決方法_ファジースキン(Fuzzy Skin)

 

木質フィラメントでプリントすると、↓のような「ぬいぐるみ」っぽい仕上がりになりました。

積層痕の解決方法_ファジースキン(Fuzzy Skin)  積層痕の解決方法_ファジースキン(Fuzzy Skin)後ろ姿

 

ファジースキンの詳しい操作方法については、↓の記事をご覧ください。

関連記事:Bambu Studioの基本操作・使い方・機能・設定を徹底解説!

 

⑤ 自動キャリブレーション・自動レベリング機能を使う

5つ目は「自動キャリブレーション・自動レベリング機能を搭載している3Dプリンターを使う」ことです。

 


最近では減ってきましたが、機械によっては、シックネスゲージや紙を使って「手動で調整するプリンター」があります。手動だと手間がかかるだけでなく、精度にばらつきが起きやすいというデメリットがあります。

手動キャリブレーション

 

また、テーブルを平面にする作業は、人の感覚で調整ますので、誤差が起きやすくなります。するとプリントの精度が落ち、積層痕が目立ちやすくなる場合もあります。

手動レベリング調整

 

自動で調整できるプリンターだと、ある程度安定したプリントをすることができます。自動キャリブレーション

 

このベンチマーク↓は、「自動キャリブレーション」と「手動キャリブレーション」それぞれでプリントした造形物です。当然、他の要素も絡みますので一口に比較にはなりませんが、違いはあるかなと感じます。

 

ちなみに自動キャリブレーションを搭載している3Dプリンターには、「Bambulab A1」や「Bambulab A1 mini」などがオススメです。

 

⑥ ヤスリを使う

5つ目は「ヤスリを使う」方法です。

 


プラスチックは、表面を研磨することができます。たとえば以下の写真は、ABSの作品にヤスリをかけたものですが、積層痕が消えており、とても滑らかになっています。

やすり加工前と後

 

やすりには、空研ぎペーパーか耐水ペーパーのどちらかを使う方法がありますが、耐水ペーパーの方が研磨しやすいです。やすりについて試した記事がありますので、↓を参考にして下さい。

関連記事

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色々なフィラメントを使って、やすりがけを試したみました↓

 

⑦ リューター(ルーター)を使う

5つ目は「リューター(ルーター)」を使う方法です。

 

リューターとは、モーターの自動回転を利用して研磨するツールのことです。手で研磨するのは、とても大変なのでこのようなものを使うと便利です。

ミニルーター

 

以下の写真は、加工前と後の違いです。

ミニルーター加工前と加工後

 

USBで充電するタイプのミニルーターは、格安で購入することができるのでおすすめです。

 

実際のミニルーターをレビューしてみましたので、参考にして下さい↓

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⑧ 表面仕上げ加工機を使う

6つ目は「表面仕上げ加工機」を使う方法です。

 

Polysherという加工機を使うと、表面をツヤツヤに仕上げることができます。仕組みは、BOXの中に造形品を置き、イソプロピルアルコール噴霧させることで表面を仕上げていきます。

 

また、PolySmoothという専用のフィラメントを使う必要があります。

 

まとめ

項目 説明
積層痕とは? 造形を行うプロセスで発生する層の痕跡(こんせき)
積層痕が生まれる仕組み 線を積み上げているので、層間に痕が発生する
積層痕を滑らかに見せるコツ ①積層ピッチを薄くする
②目立たない「色」を使う
③目立たない「樹脂」を使う
④ヤスリをかける
⑤リューターを使う
⑥PolySmoothを使う

 

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