積層痕について、このような疑問はないでしょうか?
・ 積層痕は、なぜできてしまうの?
・ 積層痕を、キレイに見せるコツ
本記事では、上記のような疑問にお答えしています。
私自身、3Dプリンターの保守やサポートのお仕事をしておりますので、その経験が参考になれば幸いです。
積層痕とは?
造形物を横から見ると、地層のように積みあがっている様子がうかがえます。この層を「積層痕」と呼びます
特にFDMと呼ばれるプリント方式は、積層痕が目立ちやすいです。たとえば下の写真は、異なる方式でプリントしたものですが、滑らかさに違いがあることが分かります。
ちなみに光造形は、光にあてることで硬化する「液体」を使いますので、層が滑らかになります。また粉末積層と呼ばれる方式は「粉」を焼結してプリントしますので、見え方がまた異なります。
3Dプリンター方式 | 積層痕の仕上がり | |
① | FDM方式 | 荒い |
② | 光造形方式 | 滑らか |
③ | 粉末積層方式 | 比較的滑らか |
3Dプリンターに精通している方であれば、作品を見るだけで「どの方式で作ったか」や「どの置き向きで作ったか」「どれくらいの調整値で作ったか」などが分かるようになってきます。
積層痕が生まれる仕組み
まさに地層のように、地面から順番に線を積み上げていきますので「層のつぎ目」が際立ちます。
なかなかプリントのイメージが沸かない方は、造形の様子を参考にしてみて下さい↓
積層痕を滑らかに見せる5つのコツ
① 積層ピッチ(レイヤーの高さ)の値を下げる
3Dプリントをする際は、必ずスライサーソフトを使いますが、その中で積層ピッチの値を下げると効果的です。そうすると「1層あたりの厚みを薄くする」ということができ、つまりは滑らかな積層ができあがるというわけです。
たとえば下の写真は、0.1mm~0.4mmの積層ピッチでプリントしたものです。比較をするとよく分かりますが、0.1mmは積層痕があまり目立たないことが分かります。
上記のようにピッチを下げると、とても効果的ですが、その分「積層数」が増えることになります。プリント時間が増えてしまいますので、バランスを考えることが大切です。
私の経験では、0.2mmピッチで設定するユーザーさんが圧倒的に多いですね。デフォルトの値ということもありますが、仕上がりと時間のバランスがとても良いのだと感じます。
② 目立たない色を使う
今までたくさんの作品を見てきましたが、使うフィラメントの色によって、見え方はかなり違います。以下の写真は、すべて0.4mmの積層ピッチでプリントしたものです。みなさんはどの色が一番キレイに見えますか?
多くの方は、「グレー」や「青」の積層痕が目立ち、「白」や「黄」はあまり目立たないように見えるのではないかと思います。もし、お客さんに作品を見せる時などは、こちらから色を提案して作ると、評価が良くなるかもしれませんね。
近年では、あらゆるカラーフィラメントが安価に販売されていますので、色で樹脂を選ぶのも有りだと思います。
↓のフィラメントは、一風変わった「パステルカラー色」です。
③ 目立たない樹脂を使う
近年の3Dプリンターは、さまざまな樹脂を使えるようになってきました。違う樹脂でプリントすると、見え方が全く異なります。たとえば以下の写真は、異なる樹脂で造形したものですが、カーボンの方は積層痕がぼやけていることが分かります。
ちなみにカーボンフィラメントは、軽量なわりに強度が高いという特徴があります。そのためラケットやゴルフクラブなどのスポーツ用品に多く使われていますね。
また下の写真は、木質のフィラメントを使ってプリントしたものです。PLAやABSのようなプラスチック感は全くなくなりますので、子供用のおもちゃなんかには良さそうですね。
木質フィラメントにも色の種類があり、どれがシックリくるのか迷うところです。私は4色が少量ずつセットになった商品を購入して、仕上がりの違いを比較していました。
④ ヤスリを使う
プラスチックは、表面を研磨することができます。たとえば以下の写真は、ABSの作品にヤスリをかけたものですが、積層痕が消えており、とても滑らかになっています。
やすりには、空研ぎペーパーか耐水ペーパーのどちらかを使う方法がありますが、耐水ペーパーの方が研磨しやすいです。やすりについて試した記事がありますので、↓を参考にして下さい。
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⑤ リューター(ルーター)を使う
リューターとは、モーターの自動回転を利用して研磨するツールのことです。手で研磨するのは、とても大変なのでこのようなものを使うと便利です。
以下の写真は、加工前と後の違いです。
USBで充電するタイプのミニルーターは、格安で購入することができるのでおすすめです。
実際のミニルーターをレビューしてみましたので、参考にして下さい↓
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⑥ 表面仕上げ加工機を使う
Polysherという加工機を使うと、表面をツヤツヤに仕上げることができます。仕組みは、BOXの中に造形品を置き、イソプロピルアルコール噴霧させることで表面を仕上げていきます。
また、PolySmoothという専用のフィラメントを使う必要があります。
まとめ
項目 | 説明 | |
① | 積層痕とは? | 造形を行うプロセスで発生する層の痕跡(こんせき) |
② | 積層痕が生まれる仕組み | 線を積み上げているので、層間に痕が発生する |
③ | 積層痕を滑らかに見せるコツ | ①積層ピッチを薄くする ②目立たない「色」を使う ③目立たない「樹脂」を使う ④ヤスリをかける ⑤リューターを使う ⑥PolySmoothを使う |
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