3Dプリンターで、こんな悩みはありませんか?
・ 糸引きが多い。
・ フィラメントがパキパキ折れる。
・ フィラメントが湿気ている。
それは「フィラメントの防湿・乾燥・保管方法が間違っている」可能性があります。
私自身、業務用3Dプリンターのサポートを行っておりますので、この経験がお力になれれば幸いです。
保管方法に注意しよう
原料であるプラスチックには、細かいすき間が存在し、そこに大気中の水分が入り込んでしまいます。
そのため、ジップロックや密閉ボックスに入れておかないと、多量に水分を吸収し、さまざまな症状が起きます。また、一度吸水してしまうと、除湿することが難しいケースもあります。
吸湿したまま使うと起きる症状
症状① 気泡の発生
ノズルは、190℃~260℃もの熱がかかります。
吸湿しているフィラメントが通過すると、パチパチと音がして「気泡穴」が発生します。
↑気泡が入っているのが分かります。
症状② 糸引き
たとえば、しっかり焼いたお餅をほおばると「パリッ」としています。ですが焼き時間を抑えたり、しょうゆや水分を足すと「びょーん」と伸びますよね。
それと同じで、3Dプリンターもノズルが移動したタイミングで、糸引きがおきやすくなります。
症状③ ノズル詰まり
吸湿している状態でプリントすると、ノズル詰まりがおきやすくなります。
なぜかと言うと、水分が蒸発することで、ノズル内に圧力が発生します。すると上向きの圧力が働くので、フィラメントが下へ送られなくなってしまいます。
私も、吸湿したナイロンやPVAでノズル詰まりが起きやすくなったことがあります。
症状④ 強度不足
気泡が入ったものでプリントしてしまうと、接着力が低下するため、強度不足が起きます。
すると割れやすくなったり、仕上がりが悪くなることがあります。
フィラメントには吸水率に違いがある
種類ごとにまとめましたので、ご自身がよく使われるフィラメントをご確認ください。
フィラメント名 | 吸水率 | |
① | PVA | 30% |
② | ナイロン66 | 1.5% |
③ | ナイロン6 | 1.0% |
④ | エラストマー(TPU) | 0.7%~0.9% |
⑤ | ABS | 0.3%~0.7% |
⑥ | PLA | 0.3%~0.5% |
⑦ | PC | 0.15%~0.17% |
⑧ | PP | 0.01%~0.02% |
↑値の多いほうが、吸水率が高くなります。
PVAがダントツで、次いでナイロン6や66が高くなっていますね。
短期保管?長期保管?
近年では、種類や色を選択できるようになったため「使いさしのフィラメント」が増えがちです。
しばらく使わないのに適当な保管してしまうと、一気に劣化が進んでしまいます。
フィラメントの保管方法
① 密封できるジップロックを使う
もっとも簡易的な方法です。フィラメントが入っていたジップロックに保管します。
↓その際には、一緒にシリカゲルを入れます。吸水率の低いPLA、PC、PPにおすすめです。
↓より乾燥力を強くしたいときは「強力乾燥剤」というものが効果的です。
強力乾燥剤の効果を、検証しましたのでこちらも参考にしてください。→ 【強力乾燥剤 VS シリカゲル】OZO-Zの湿度の下がり方がすごかった
② 密封できる保管ボックスを使う
フィラメントの数が多い場合は、大きいボックスに入れます。
体積が多いため「サイズの大きい強力乾燥剤」を入れるとよいでしょう。
③ 圧縮袋を使う
長期保存をしておきたい場合は、圧縮袋を使うと良いです。
↑私の場合は、値段が高いフィラメント保管や、関係ないですがお米の保存に使っています。
掃除機があれば、かんたんに真空状態にできますので便利ですよ。
eSUNより3Dプリンターフィラメント用の圧縮袋が販売されているので、おすすめです。
乾燥機(フィラメントドライヤー)を利用する
乾燥機の役割ってなに?
「高い防湿効果を保ちながら、プリントをすることができる」という役割があります。
ヒーターが搭載されており、温風を循環させることができます。これによりフィラメントがドライに保たれます。
サイズの大きいタイプには、乾燥剤を置くスペースが確保されています。
乾燥機の注意点
フィラメントの湿気は、簡単に除去することは期待できません。
なぜならボビンに巻かれたフィラメントは、除湿させにくい形状となっているためです。
そのため、フィラメント開封後は、すばやくセットする必要があります。
乾燥機は、こんな場合に向いている。
乾燥機は、「PVA、ナイロン系、エラストマー(TPU)」などの、吸水率の高い樹脂に向いています。
PVA、ナイロン系は、吸湿が早いので、ぜひ使用したいところです。
おすすめの乾燥機(フィラメントドライヤー)
1個セットできるタイプ
1個だけセットできるタイプで、温度70℃まで出力することができます。
2個セットできるタイプ
2個セットでき、乾燥剤を置くスペースも設けられています。75℃まで出力できるタイプです。
Tiertime Filament Dryer PROは、開梱レビューを行いましたので、参考にして下さい↓
フィラメントを使っていると、こんな悩みが出てきませんか? ・ 湿気の対策はどうすればいいの? ・ どうやって乾燥させるの? 結論から申し上げると、「フィラメント乾燥ドライヤー」を使うと効果的です。 &[…]
防湿ボックスを利用する
これからご紹介するツールを使うことで、プリント中でも防湿できます。
防湿ボックスの役割ってなに?
防湿ボックスは、「防湿しながらプリントができる」というのが最大の役割です。
密閉された箱のなかには、ボビンを可動させるローラーがあります。
フィラメントはチューブを通って、外に出せるようになっています。
↑3Dプリンターへ通せば、防湿しながらプリントができるというわけです。
乾燥剤を入れることで、防湿します。
↑強力乾燥剤にさしかえて使うとより効果的です。
防湿ボックスはこんな場合に向いている
防湿ボックスは、「ABS、PLA、PC、PPなどの、吸水率の低いフィラメントの運用」に向いています。
なぜならば、ヒーターはありませんので、高い防湿効果は望めません。
それでもという場合は、強力乾燥剤に変えて運用すると良いでしょう。
おすすめの防湿ボックス
防湿ボックスは、フィラメントが複数入れれるタイプがあります。
本記事は、動画でも詳しく解説しています↓
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