
FDM(熱溶解積層)方式において、造形物が剥がれる・浮くという課題があります。
原因は大きく分けて3点ほど挙げられます。それぞれ詳しく説明していきます。
- 使用方法間違いによる剥がれ
- 部品不良による剥がれ
- 樹脂の収縮による剥がれ
1.使用方法間違いによる剥がれ
まずは使い方を誤っているために症状がおきることがあります。
確認する項目は下記のとおりです。
- ノズルとテーブルの隙間間隔(ギャップ値)は適正か
- ノズルの温度は適正か
- テーブルの温度は適正か
- テーブルが平面になっているか
- 印字速度は適正か
- 庫内温度は適正に保たれているか
- モデルの置き向きに問題はないか
①ノズルとテーブルの隙間の間隔(ギャップ値)は適正か?
離れすぎると接着が甘くなってしまい、剥がれの原因となってしまいます。
およそ0.2mm~0.3mmの間隔になるように手動で調整することが多く、機械によってはオートキャリブレーション(自動調整)でおこなってくれるものもあります。
ちなみにシックネスゲージとはこのような工具です。
②ノズルの温度は適正か
フィラメントの商品箱やボビンに推奨温度が表記されていることが多いので確認しましょう。
③テーブルの温度は適正か
こちらもフィラメントの商品箱やボビンに記載されていることが多いです。
・ABS:100℃
・PLA:50℃~60℃
④テーブルが平面になっているか
平面が保たれていない場合は、ノズルとの間隔が場所によって変わってしまうため、剥がれにつながります。
また、オートレベリング調整が搭載されている機種もありますので、詳しくはメーカーに問い合わせします。
それでも平らにならない場合は、テーブルが歪んでいる可能性がありますので、テーブル交換・修理を検討してください。
ラフトはテーブルの上に「仮のテーブル」を敷きなおしてくれますので、多少の平面ズレを緩和させることが可能です。およそ5層前後のラフトを設定するようにして下さい。
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⑤印字速度は適正か
速すぎるとテーブルに樹脂が定着する前にノズルが移動してしまいますので、剥がれの原因につながります。
10mm/s程度が一般的です。
⑥庫内温度は適正に保たれているか
たとえば収縮力が強い樹脂は、冷えてしまうと「強い反り」が発生します。そのためカバーを閉めることによって庫内温度を維持させます。また逆にPLAなどの耐熱温度が低いフィラメントは、庫内温度が高いと造形表面が荒れてしまいますので、カバーは解放しておきます。
・PA(ナイロン)
・TPU(ゴム系樹脂)
⑦モデルの置き向きに問題はないか
たとえば下記のような細長い板状のモデルを立てて造形すると、反りやすくなります。
この場合は、寝かせることで剥がれを軽減させることができます。
2.部品不良による剥がれ
3Dプリンターを使っていると少しずつ部品が劣化していきます。それにより剥がれの原因が発生することがあります。
確認する項目は下記のとおりです。
- テーブルに破損、浮き、汚れ、キズがないか
- ノズル不良は発生していないか
①テーブルに破損、浮き、汚れ、キズがないか
状態が良くないと定着不良が発生しますので、テーブルのメンテナンスを実施しましょう。
また軽度なキズであれば、ラフトで解消することがあります。こちらも5層程度のラフトを使用してください。
②ノズル不良は発生していないか
吐出量(ノズルから出てくるフィラメントの量)が減少すると、テーブルへの接着が甘くなります。ノズルから排出されるフィラメントの線の太さを確認して下さい。いつもより細い場合は、ノズル不良を起こしかけている可能性があります。
↓ノズルは、インターネットでも安価に購入できるようになってきました。
3.樹脂による剥がれ
つまり「ABS」や「PA(ナイロン)」や「PP(ポリプロピレン)」などの樹脂が該当します。
主に下記のような対処方法があります。
- 冷却ファンを停止させる
- ブリム(BRIM)を使用する
- ラフトを使用する
- 1層目の流量を増やす
- 糊を使用する
- プラットフォームシートを使用する
- 収縮力の弱いフィラメントを使用する
- PPテープを使用する
①冷却ファンを停止させる
このファンは、造形物の見栄えがよくなるのでONにすることが一般的ですが、収縮してしまう副作用があります。
このあたりはスライサーソフトによって出来る出来ないがありますが、設定項目があれば試してみて下さい。
②ブリム(BRIM)を使用する
設置面積を広げることによって、剥がれにくくする役割があります。
ですがモデルの1層目につながる形でブリムが形成されるので、造形後にニッパーなどでカットする必要があります。
③ラフトを使用する
もしスライサーソフトに「ラフト+ブリム」という両方設定できる場合は、より効果的です。
④1層目の流量を増やす
反対にラフトを使用しない場合は「造形物の1層目」の流量を増やします。
⑤糊を使用する
ガラスのプラットフォームにも有効で、全体にまんべんなく3度~5度塗りします。
下記のトンボさんのスティックのりが効果的です。
また、おすすめののりについてまとめましたので、↓の記事もご覧ください。
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⑥プラットフォームシートを使用する
消耗品なのでたまに張替えが必要ですが、3Mさんのプラットフォームシートだと何十回と使用することができました。
これも樹脂は限られますので、ご注意下さい。
⑦収縮力の弱いフィラメントを使用する
それにより、収縮力を抑えることができます。
⑧PPテープを使用する(PP限定)
易く済ますことができるので、コスパが非常に良いです。
まとめ
剥がれの問題は、メーカー・機種によって、それぞれの癖や機能の違いが大きく影響します。まずは正しい使い方を改めて確認してみましょう。難易度の高い樹脂は、剥がれないような工夫をしながら対処をする必要があります。
引き続き、良い解決方法を模索できればと思います。
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