この記事について 【PA(ナイロン)フィラメントの特徴】
ポリアミド(ナイロン)は、あらゆる場面で使われているプラスチック素材です。FDM方式の3Dプリンターでも造形することができ、今後期待されている樹脂の一つです。今回は実際にナイロンで造形を行い、3Dプリンターを使う上での特徴をまとめましたので、造形の参考になれば幸いです。
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Creality K1という3Dプリンターで、ナイロン造形をしています↓
PA(ポリアミド)、ナイロンとは?
ポリアミドとはエンジニアプラスチックに分類されており、一般的に流通している名称は「ナイロン」とも呼ばれます。最初にデュポン社という会社が「ナイロン6,6」という名前で商標登録をしたのが由来となっています。さまざまな工業製品や部品、衣類などの日用品にも使用されています。
ナイロンの種類
3Dプリンターで主に使用されるフィラメントは「ナイロン6」、「ナイロン6,6」、「ナイロン12」の3種類があります。
<共通特性>
耐衝撃性、耐薬品性、耐摩耗性、耐寒冷性、耐油性、耐熱温度が高いという特性があります。
<ナイロン6>
ナイロン6は、耐熱温度(80℃~130℃)と融点(225℃前後)が高く、吸湿性が高い(吸湿しやすい)という特徴があります。
<ナイロン6,6>
ナイロンの中でも耐熱温度(80℃~150℃)と融点(265℃前後)が最も高く、ナイロン6と同様に吸湿性が高いという特徴があります。
<ナイロン12>
ナイロン6や66よりも耐寒衝撃性、耐候性が高く、吸水性が低い(吸湿しにくい)という特徴があります。吸水性や融点が低い為、3Dプリンターでの造形はやり易いと言えます。
今回使用したフィラメント
今回はPolymaker CoPAを使用しました。この商品はナイロン6とナイロン6,6をベースに製品化されています。
各樹脂の特徴一覧
各樹脂をFDM方式の3Dプリンターで使った場合の特徴一覧です。
項目 | ABS | PLA | PP | PC | PETG | TPU | PA | 木質 | |
1 | 全体的な造形のし易さ | 〇 | ◎ | △ | 〇 | ◎ | △ | △ | 〇 |
2 | テーブルの定着性 | △ | ◎ | △ | ◎ | ◎ | ◎ | △ | 〇 |
3 | 他の樹脂との相性 | △ | ◎ | △ | 〇 | × | 〇 | 〇 | × |
4 | 後加工のし易さ | ◎ | △ | △ | 〇 | 〇 | △ | △ | 〇 |
5 | 匂いの無さ | 〇 | ◎ | ◎ | 〇 | ◎ | ◎ | 〇 | △ |
6 | 湿気に対する強さ | 〇 | ◎ | 〇 | 〇 | △ | △ | × | △ |
7 | 価格 | ◎ | ◎ | 〇 | 〇 | ◎ | 〇 | △ | 〇 |
8 | 強度 | ◎ | △ | ◎ | ◎ | 〇 | ◎ | ◎ | △ |
9 | 耐熱温度 | 〇 | △ | ◎ | ◎ | 〇 | 〇 | ◎ | – |
3Dプリンターを使用した際のナイロンの特徴
1.全体的な造形のし易さ △
- 「反り」や「表面が汚い」等の失敗が発生しやすい。
- フィラメントの「除湿」管理を気を付ける必要がある。
- プラットフォームテーブルに糊を塗ったり、掃除をする手間が発生する。
- フィラメントの料金が高めなので、気軽に造形をしにくい。
2.テーブルへの定着性 △
プラットフォームテーブルへの定着性は低いため、スティック糊が必要となります。また一見して定着しているかのように見えても、造形を進めていく中で徐々に剥がれていく場合があります。スティック糊も1度塗りでは効果が薄く、何度か重ね塗りする必要があります。
3.他の樹脂との相性 〇
4.後加工のし易さ △
ヤスリ掛けに関しては可能ですが、耐水ペーパーを使用すると吸水してしまうので注意が必要です。
5.匂いの無さ 〇
特に気になりませんが、ノズル周りについた樹脂が焦げた場合は多少します。
6.湿気に対する強さ ×
特に湿気の影響をを受けやすく、一旦吸湿してしまうと造形がさらに難しくなります。
- 糸引きが発生しやすくなる
- 積層間の接着強度が弱まるため、造形物の強度が弱くなる
- 水分蒸発によって小さい穴があく
- プラットフォームテーブルの定着力が弱まる
- 造形物の仕上がりが悪くなる
フィラメントのパッケージ開封後は、PolyBoxへセットして使用することをお勧めします。また使用していない時も除湿剤が入ったフィラメントBOXへ保管するようにしましょう。
7.価格 △
コンシューマー(個人)向けの3Dプリンターでは、そもそもナイロン自体が使えない製品が多く、多くは業務用向けで使用されます。
ネット上で販売されている値段は、4,000円~15,000円(500g~1kg)の価格帯となります。
8.強度 ◎
ナイロンは耐衝撃性や引張強さが高い為、自動車部品や航空部品にも使用されます。FDM方式の3Dプリンターでは、フィラメントの吸湿具合によって変動する為、運用方法が非常に重要となります。
9.耐熱温度 ◎
耐熱温度は高く、80℃~150℃となります。
添加されたフィラメントについて
ナイロン造形の難しさから、グラスファイバーを添加したフィラメントが販売されています。グラスファイバーを添加させることで、積層間の接着力が高まる上に表面の仕上がりも綺麗になります。
また、カーボンファイバー(炭素繊維)を添加したフィラメントも販売されており、強度が増す上に表面の仕上がりも綺麗になります。プラットフォームテーブルへの定着性が気になる場合は、ナイロン12のカーボンファイバーにすると反りを抑えられます。
まとめ
ポリアミド(ナイロン)は、特に下記の点に注意しながら造形をする必要があります。
- プラットフォームテーブルへの定着方法
- フィラメントが吸湿させない管理方法
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