今回は、それぞれの「役割」や「使いどころ」なんかを詳しく解説したいと思います。
- ラフトとは?
- ラフトのメリット・デメリット
- ラフトの失敗例
- スカートとは?
- スカートのメリット・デメリット
- スカートの使いどころ
ラフトとは?
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動画でも解説しています↓
ラフトの意味
ラフトとは、日本語にすると「いかだ」です。造形物の下に板状の仮のテーブルを造形します。
下の画像は、左がラフト無し。右がラフト有りの画像です。
ラフトの効果・メリット
- 底面の仕上がりが良くなる
- 造形が安定する
- テーブルから剥がれにくくなる
- プラットフォームの交換頻度を減らせる
それでは、順番に詳しく解説していきます。
① 底面の仕上がりが良くなる
「造形物の底面」の仕上がりを良くすることができます。
仮のテーブルを改めて敷きなおしてくれるので、多少の汚れなどを気にせずに綺麗に仕上げてくれるのです。
② 造形が安定する
造形が安定します。
どういうことかというと、一般的な3Dプリンターは、ノズルとプラットフォームのスキマ間隔を手動で設定します。
下の写真のようなシックネスゲージ(隙間ゲージ)をノズルとテーブルの間に挟み込んで、間隔を設定するのです。
やはり人間の手で設定しているので、誤差が発生しやすくなります。
そしてあまりに誤差が大きいと、
・ 1層目が潰れる
などが発生しやすくなります。
数層のラフトを敷いておけば、誤差を均一に慣らしてくれます。シックネスゲージ(隙間ゲージ)の設定に不安を感じる方は、ラフトを使用することをお勧めします。
③ テーブルから剥がれにくくなる
プラットフォームテーブルに定着しやすくなります。
ラフトを設定すると、テーブルに接する面積を広げることが出来ます。それにより、反りが強いフィラメントの剥がれ・反り・浮き対処になります。
また、似たような機能でブリム(BRIM)という機能があります。ブリムと共通する効果もありますが、基本的には異なります。
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④ プラットフォームの交換頻度を減らせる
ラフトのおかげで、プラットフォームシートの交換頻度を減らすことができます。
ケチ臭い話になりますが、テーブル上のプラットフォームシートは消耗品です。お金がかかるので、できることならあまり交換したくはありません。
先ほどもご説明した通り、ラフトは仮のテーブルを敷きなおしてくれます。それによりテーブル上にキズや汚れがあったとしても、無かったことにしてくれるのです。
ラフトのデメリット
- 使用できない樹脂がある
- フィラメントを余分に使用する
- 造形時間が長くなる
- ゴミが増える
こちらも順番に詳しく説明していきます。
① 使用できない樹脂がある
ラフトに向かない樹脂があります。そのため、ラフトが使える樹脂は限定されます。
造形が完了した後は、ラフトを剥がす必要があるのですが「剥がしにくい」樹脂があります。
剥がしにくい理由としては、樹脂同士の接着力が強い為です。
② フィラメントを余分に使用する
フィラメントの使用量が増えます。
ラフトはフィラメントの樹脂で造られます。その為ラフトを使用しない場合と比較すると、フィラメント使用量は増えます。またその使用量は、造形モデルのX軸Y軸の大きさによって変化します。
③ 造形時間が長くなる
ラフトを造形する分、完成までの時間が長くなります。
また、造形する面積(X軸・Y軸)が広ければ広いほど、造形時間がより長くなります。
短くしたい場合は、ラフトの層数や充填率を減らす工夫が必要になります。
④ ゴミが増える
造形が完成した後は、造形物からラフトを剥がします。剥がしたラフトはゴミになります。
たくさんの造形を行っていると、ラフトや失敗などでゴミがたくさん出ますので、専用のゴミ箱があると良いでしょう。
ラフトの失敗例
ラフトの失敗例をご紹介致します。
<ラフトが造形物に残ってしまう>
下記の写真は、ABSでラフト有りで造形したものです。ラフトを剥がそうとしましたが、造形物に残ってしまいました。原因は、「モデルとラフトの距離(間隔)」が近すぎた為です。間隔値をスライサーソフトで調整して解決しています。
<ラフトを剥がす際に割れる>
下記の写真は、PETGでラフト有りで造形したものです。造形物を剥がそうとしましたが、割れてしまいました。
樹脂の性質上発生したものと思われます。 こちらも同様に間隔値をスライサーソフトで調整して解決しています。
光造形のラフトについて
これまでにご説明したのは、FDM方式の例ですが、光造形でもラフトという機能を使用します。
光造形でも同様にモデルの底面に設置します。
光造形では、下の写真のように「逆さの状態」で造形されます。
そのため、造形物の自重によってプラットフォームから落ちやすくなります。
※大きい造形物になるほど影響します。
また光造形では、「造形物とラフトの間にスキマがないと」くっついてしまいます。
※FDMのように手で剥がせません。
そのため、サポートが必要な形状で使われることがほとんどです。
ラフトのトラブルは、この動画も参考にしてください↓
スカートとは?
スカート機能も使いどころは、判断する必要があります。
スカートの意味
スカートとは、試し書きのことです。
造形を開始する直前にモデルの周りに指定した週数の線を印字します。
下の図のように、造形物の周りに沿って1本の線が引かれています。
スカートの効果・メリット
- 空打ちを防ぐことが出来る
- プラットフォームとノズルの間隔調整が出来る
- フィラメント使用量が少なくすむ
それでは順番に説明していきます。
① 空打ちを防ぐことが出来る
ボールペンと同じく、いきなり書き始めるとインク(フィラメント)が出てこない場合があります。理由は、ノズル内に一時的にフィラメントが無くなっているからです。
これが、「スカート」の最大の機能・メリットとなります。
② テーブルとノズルの間隔調整が出来る
試し書き中は、実際に書いているので、テーブルとノズルの高さ(またはスキマ)が合っているかを目視で確認できます。
もし合っていない場合は、スカート印字中に間隔調整を実施します。
※機種によっては、造形中の調整は出来ません。
スカート造形中に、調整が間に合えば、本番に影響は発生しません。
③ フィラメント使用量が少ない
フィラメントの使用量は少なく済みます。
スカートは、1~2周で設定すれば、およそ十分です。範囲が広い造形物の場合は、多少多くなりますが、それでも少量で済ますことが出来ます。
スカートのデメリット
スカートは、デメリットがあまりないところが特徴的です。
- フィラメントを少し使用する
- 造形時間が少し長くなる
スカートの使いどころ
・ラフトやブリムが使用できない時
ラフトやブリムが使用できない樹脂の場合は、基本的にはスカートをいれましょう。
まとめ
ラフトもスカートも、造形を綺麗に行うためのサポート機能になります。今回挙げたようなメリット・デメリットを正しく理解し、各機能を最大限に活用しましょう。
また、ラフトに似た機能でブリム(BRIM)があります。下記の記事で違いやメリット・デメリットを確認してみて下さい。
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