エラストマー(TPE・TPU・ゴム系)フィラメントの特徴

Polyflextpu95エラストマーフィラメント

 

この記事について 【TPEフィラメントの特徴】

近年では、FDM方式の3Dプリンターでもエラストマー(ゴム系)フィラメントを使用した造形が可能となっています。

 

パッキンやスマホカバー等で幅広く使用されていて、高い需要があります。

 

↓の動画ではゴムフィラメントの選び方をご紹介していますので、参考にしてください。

 

エラストマー(elastomer)とは?

そもそもエラストマーとは、elastic(弾性がある)とpolymer(重合体)を合わせた造語になります。

 

3Dプリンター業界ではゴムのような弾力性のあるものを指すことが多いです。

 

 

TPE(熱可塑性エラストマー)とは?

TPEは、熱可塑性エラストマー(ねつかそせいえらすとまー)とも呼ばれ、ゴム系樹脂の総称としても使われることが多いです。

 

柔らかい樹脂なので「プラスチック」とは感じにくいですが、プラスチックに分類されます。

 

熱を加える事で流動性をもつようになります。そして冷えるとゴム状に戻るという性質を持っています。

 

TPEの種類には、TPU(ポリウレタン系)、TPS(スチレン系)、TPO(オレフィン系)があります。FDM方式の3DプリンターではTPUが良く使用され、商品名に表記されていることがあります。

 

主な特性は下記の通りです。

耐摩耗性
・引張強度
・弾力性、柔軟性
耐衝撃性
・防音効果

 

またTPEは自動車業界のみならず、幅広い分野で使用されています。

・自動車の内装部分(窓干渉部、操作部など)
・スポーツ用品、おもちゃ
・グリップ、チューブ

 

 

熱硬化性エラストマー

少し余談ですが、類似用語で熱硬化性エラストマーというものもあります。

 

これは、熱を加えても軟化しないエラストマーで、一般的なゴムはこちらになります。

 

軟化しないので、耐熱性にすぐれています。

 

各樹脂の特徴について

比較用に、ほかの樹脂の特性一覧を掲載します。

項目 ABS PLA PP PC PETG TPU PA 木質
1 全体的な造形のし易さ
2 テーブルの定着性
3 他の樹脂との相性 × ×
4 後加工のし易さ
5 匂いの無さ
6 湿気に対する強さ ×
7 価格
8 強度
9 耐熱温度

 

3Dプリンターを使用した際のTPUの特徴

ここからは、3DプリンターでTPUを使用した際の各特徴について挙げていきます。

 

全体的な造形のし易さ △

TPUを3Dプリンターで使用する際には、いくつかの注意点があります。

 

造形には多少の手間がかかるため、あまり使い易いとは言えません。

 

ところが注意点を遵守し、使い慣れることで安定した出力が可能です。

 

本記事の「その他の特性」でも注意点をご紹介していますので、確認してみて下さい。

 

テーブルの定着性 ◎

プラットフォームテーブルへの定着性は非常に良いです。

 

低温(およそ50℃~70℃)で定着させることが多く、反りや剥がれは起きにくい傾向にあります。

 

逆に接地面が広い造形物の場合は、その定着性の良さから剥がしにくい場合があります。

 

スクレーパーで無理に剥がそうとすると、造形物やテーブルを損傷させてしまうことがあるので、注意しましょう。

 

剥がれない場合は、温度を下げたり、1層目の厚さを厚目に変更するなどの対応が必要となります。

 

また、ラフトやブリムを付けてしまうと、除去するのが困難なため、あまり使用しません。

 

他の樹脂との相性 〇

エラストマーは、全てではないですがサポート専用樹脂が使用可能です。

 

例えばPolymaker製であれば、水溶性サポート材Polysupportが使用可能となっています。

 

後加工のし易さ △

後加工はし易くありませんが、ヤスリなどをかけることは可能です。

 

しかしながらフレキシブルな樹脂のため、ヤスリでは削りにくいです。

 

実際にヤスリ掛けをしてみましたが、耐水ペーパーがすぐボロボロになってしまいました。

 

一応、手触りを滑らかにすることは可能でした。

TPUをヤスリ掛けする前と後の画像

 

匂いの無さ ◎

造形中も匂いは特にありません。

 

湿気に対する強さ △

湿気には強くないので、PolyBoxのような防湿環境での使用をお勧めします。

また使用していない時も、除湿剤が入ったBOXなどに保管しましょう。

 

価格 〇

価格は比較的、安価です。

 

商用向けで、5,000円~7,000円程度です。

 

コンシューマー向けであれば2,000円台から購入することが可能で、ラインナップも豊富です。

 

強度 ◎

柔軟で弾力性があるため衝撃に強いです。また引張強度も強いです。

 

ですが設定や調整によっては1層目が「ヨレ気味・ほつれ」が発生したり、表面部が弱くなってしまいますので経験やスキルが必要となります。

 

下記の「その他の特性」でもご説明します。

 

耐熱温度 〇

およそ70℃~80℃となります。

 

その他の特性

<糸引き>

糸引きが発生しやすい樹脂となります。

 

糸引きとは、ノズルから自重によりフィラメントが垂れ落ち、移動した際に「糸を引く」症状のことを指します。

 

そして糸引きの対策については、「ノズル温度を調整する」「リトラクトを調整する」ことで軽減できます。

 

詳しくは下記の記事を合わせてお読みください。
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<ノズル詰まり>

TPUはノズル詰まりが起きやすい樹脂です。

 

下記に詳しく対処方法をまとめていますので、合わせてお読みください。
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<底面の造形線の間隔が広くなってしまう>

下記の写真のように1層目に造形線を書く際に、線と線の間隔が空いてしまうことがあります。

TPU、エラストマーの1層目のほつれ、線の間隔が広い

 

他の樹脂であれば硬さがあるので問題はないですが、エラストマーの場合は柔らかい樹脂の為、そこからほつれが発生してしまいます。

TPU・エラストマーの底面ヨレ、ばらばらになる

 

対処方法については、下記の記事を合わせてご覧ください。
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まとめ・おすすめ記事

エラストマーフィラメントを使って、実際にいろいろな形状を造形しましたので参考にしてみて下さい。
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