【解決法】糸引きが起きる原因はなに?防止・処理方法

糸引きの対処方法_TPU糸引き

糸引きについて、こんなお悩みはないでしょうか?

・ 糸引きってなぜ起きるの?
・ 糸引きの対処方法が知りたい。

 

本記事では、このような疑問にお答えしています。

 

私自身、3Dプリンターの保守・サポートのお仕事をしていますので、このような経験が参考になれば幸いです。

 

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動画で見ることもできます↓

 

糸引きとは

糸引きとは、プリントした際にできる「くもの巣」のような症状のことです。

糸引きの対処方法_TPU糸引き

 

見た目に大きく影響してしまうため、取り除く作業が必要です。ところが痕になりやすいので、調整してからプリントしなおすこともあります。

 

では、どのようにして糸引きが起きるのでしょうか?

 

糸引きが起きる仕組み

糸引きは「ノズルから垂れ落ちた樹脂」が原因で発生します。詳しく解説していきます。

 


3Dプリンターには「ノズル」という部品が取り付けられています。

糸引きの対処方法_ノズル

 

ノズルは、ヒーターによって200℃~250℃ほどに温められ、固形だったフィラメントは軟化します。それをテーブルの上に書いていくことで、通常はプリントされます。

糸引きの対処方法_ヒーター

 

またプリントは、一筆書きで完成させることはできませんので「ノズルの位置は移動」します。たとえば、以下のように2つのモデルをプリントするには、モデルの間を移動する必要があります。

糸引きの対処方法_ノズルを移動しなければならない

 

移動中は、樹脂が出ないように出力を停止していますが、どうしても自重によって垂れ落ちてしまいます。つまり糸引きとは「ノズルの移動中に、垂れおちた樹脂」が原因ということになります。

 

では、どうやって糸引きを防げばよいのでしょうか?

 

糸引きの対処方法

ここからは、5つの対処方法をご紹介します。実践しやすい順番で書いていきます。

 

1.1個ずつ造形する

1つ目は「1個ずつ造形する」です。

 


糸引きを減らすポイントは「ノズル移動の頻度を減らす」ことです。1度に何個もプリントしている場合は、1個ずつ造形してみましょう。

糸引きの対処_2個で作った場合と1個の場合

 

それでも良くなくならない場合は、次項を確認してください。

 

2.フィラメントを変える

2つ目は「フィラメントを変える」です。

 


吸湿したフィラメントを使うと発症することがあります。そこで簡単な切り分け方法として、新品でプリントするとどうなるかを確認します。

新品のフィラメント

 

もし新品を使って変化がでるようであれば、フィラメントの可能性が高くなります。その場合は、水分を吸収しにくい運用方法を考える必要があります。

 

こちらの記事も参考にしてください。→【解決】フィラメントを防湿・乾燥・保管する方法

 

3.フィラメント乾燥ドライヤーを使う

3つ目は「フィラメント乾燥ドライヤーを使う」です。

 


フィラメント乾燥ドライヤーとは、フィラメントに熱を加えることができる装置です。

SUNLU FilaDryer S2

 

プラスチックのすき間には、水分が入り込んでしまうので、それを飛ばす効果が期待できます。

 

フィラメントの種類によって、加える温度や時間は異なります。たとえば最も使われているPLAであれば30℃~50℃で4時間ほど熱を加えます。

 

装置によってフィラメントをセットできる数に違いがあります。↓のレビュー記事も参考にしてみてください。

 

シングル乾燥機:【レビュー】フィラメント乾燥ドライヤーSUNLU FilaDryer S2

デュアル乾燥機:【レビュー】Tiertime製Filament Dryer PRO

 

4.スライサーソフトで調整する

4つ目は「スライサーソフトで調整する」です。

 

調整項目を3つほどご紹介致します。

 


① ノズルの温度を下げる

ノズルの温度を「10℃」ほど下げます。

 

PLAであれば200℃、ABSであれば240℃あたりに調整します。ソフトによって「印刷温度」や「ホットエンド」のように表記に違いがあります。

 


② リトラクト(引き戻し)を調整する

リトラクトとは「フィラメントを引き戻す機能」です。

 

先にご説明したとおり、糸引きは「樹脂垂れ」が原因です。そのため、垂れないように引き戻すことで軽減できます。引き戻す距離を増やすと効果的ですが、値を増やしすぎると詰まりやすくなるので、ご注意下さい。

 

リトラクトについて詳しく知りたい方は、こちらも参考にして下さい。→ 3Dプリンターのリトラクトとは?

 


③ ノズル移動の経路を変更する

ノズルの「移動するルートを変更」します。

 

ソフトによって書き順を変更したり、中空を通るのを避ける設定があります。そうすることでノズルの移動を減らし、糸引きを軽減できます。

 

5.フィラメントの種類を変える

5つ目は「フィラメントの種類を変える」です。

 


症状が起きやすい樹脂と、そうでない樹脂があります。以下のフィラメントを使っている場合は変えてみましょう。

・ TPU(エラストマー)
・ PC(ポリカーボネート)
・ 木質、木目調
・ PETG

 

この場合、どれだけ調整しても改善しないことがあります。

 

糸引きが起きにくい3Dプリンター

高速印刷と、庫内の冷却ファンにより糸引きを起こしにくい3Dプリンターがあります。

 

動画でご紹介していますので、ご覧ください↓

 

 

糸引きを除去するのに便利な工具

ここからは、糸引きを除去するのに便利なツールを2つご紹介します。

 


① エッジニッパー

1つ目は「エッジニッパー」です。

 

カットする部分がフラットになっているので、痕になりにくいです。とても扱いやすいニッパーです。

ツノダMEN-115_先端が鋭利になっている

 


② スラントナイフ

2つ目は「スラントナイフ」です。

 

えんぴつのように、しっかり握れるので、細かい糸引きもカットできます。カッターとは違い、刃がガタつくことがありません。

ペンカッター

 

まとめ

本記事でご紹介した内容をまとめます。

 

項目 詳細
糸引きとは? プリントした際にできる「くもの巣」のような症状
糸引きが起きる仕組み 自重によって樹脂が垂れるため。
糸引きの対処方法 ① 1個ずつ造形する。
② フィラメントを変える。
③ スライサーソフトを調整する。
④ フィラメントの種類を変える。
糸引きを除去するのに便利な工具 ① エッジニッパー
② スラントナイフ

 

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Ender-3 S1を使って、糸引きの対処方法をご紹介していますので、参考にして下さい。

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