「プリントが速くなるのはいいけど、品質は落ちないの?」「高速用フィラメントって使った方がいいの?」というような疑問も生まれます。
そこで今回は私なりに、検証を行っていきたいと思います。
「プリント品質への影響が心配な方」、「今までのフィラメントで高速プリントしたい方」などは、是非ご覧ください。
高速用フィラメントってどんなのがあるの?
① Creality HYPER SEREAS PLA
1つ目は、今回使用した「Creality HYPER SEREAS PLA」です。
最大600mm/sに対応しているフィラメントにも関わらず、4,000円弱という値段で購入することができます。Ender-3 V3シリーズや、Creality K1などの高速プリンターに最適です。
② Polymaker Polysonic PLA
2つ目は「Polysonic PLA」です。
Polymakerさんの製品は、とても安定していてブランド力もあり、安心ですよね。
従来のPolyLiteと比べて、プラスチックの粘度が下げられているので、流動性がとても良くなっています。
それにより、押し出し効率が良くなり、およそ出力量が40%ほどアップしています。価格は1kgで4,180円(税込)となっています。
③ eSUN ePLA-HS
3つ目は「eSUN ePLA-HS」です。eSUNフィラメントは、私もよく使っています。
価格が3,000円前後という安さはとても魅力的です。
また、ありがたいのが参考パラメーターを公開してくれている点です。高速用フィラメントに関しては、細かく書かれているので、これから始めたいという方にもとても参考になります。
※引用元:https://www.esun3d.com/ja/epla-hf-product/
動画で見る
本記事の内容は、動画でも見ることができます↓
検証内容・使う機械・フィラメント
① 4種類のPLAフィラメントを使って、それぞれ高速プリントと低速プリントを行う。
② 低速の場合と高速の場合で、どちらがキレイにプリントできたかを比較する。
検証に使う機械と、フィラメントをご紹介します。
① 3Dプリンター
「Ender-3 V3 KE」を使います。バランスが良く、高速プリントにも対応していて、コストパフォーマンスに優れている機種です。
② フィラメント
今回は、4つのフィラメントを使います。
まず、1つ目は「Creality EN-PLA」です。エントリー向けのフィラメントです。マットな感じで、光沢感は控えめです。大体どのプリンターでも使えそうな感じです。
2つ目は「BASF Ultrafuse PLA BASIC」です。ちょっと光沢感があり、やや透明性もあります。コンシューマー向けというよりかは業務向けの3Dプリンターで使われることが多いかもしれません。
他のものと比べてると光沢感が強めです。※↓の画像だと分かりにくいかもしれません。
3つ目は「Raise3D プレミアムPLA」です。これも業務向けで使われることが多いですが、オーソドックスなPLAです。色はホワイトとなっていますが、どちらかというと、アイボリーっぽくて黄色味がかった感じがあります。
4つ目は「CrealityのHYPER SERIES PLA」です。
この中で唯一の、高速プリント用のフィラメントで、プリントスピードは最大600mm/sまでと表記されています。
ハイスピードフィラメントの中でも、これは高い数値です。
検証パラメーターについて
このようなベンチマーク用モデルを使います。
それぞれのフィラメントで、高速と低速パラメーターでプリントを行い、その仕上がり具合を比較しました。
【低速プリント】:レイヤー0.2mm、プリント速度60mm/秒、加速度800mm/秒²
プリントして比較してみた結果
あまり明るいと見にくいので、写真の明るさは落としています。
① Creality EN-PLA
まず、1つ目は「Creality EN-PLA」です。高速プリントでプリントするとこんな感じになります。
ちょっと荒いかなという印象があり、側面部の文字のところにゴースティングのような症状があります。とは言っても、そこまでNGなわけではありません。
続いて、低速でプリントしたものです。こちらの方が先ほどのより文字がシャープに見えます。
↓比較すると、低速の方が文字がくっきり見えています。こうやって並べると分かりやすいです。
② BASF Ultrafuse PLA BASIC
2つ目は「BASF Ultrafuse PLA BASIC」です。ハイスピードでプリントすると、こんな感じになります。
ちょっと見にくいかもしれませんが、これもまた文字がボケている感じがあります。
こちらは低速でプリントしたものです。文字の粗さが軽減されています。オーバーハング部に、糸引きの跡があります。
こちらも比較してみます。光の加減で分かりにくいかもしれませんが、違いがあります。低速の方が、文字がくっきり表現されています。
③ Raise3D プレミアムPLA
3つ目は「Raise3D プレミアム PLA」です。ハイスピードだとこんな感じです。
ちなみに今回は、Ender-3 V3 KEを使っていますが、振動保証センサーはつけていません。揺れない場所でプリントしていますが、それでも多少の影響はあると思います。
続いて低速でプリントしたものです、前の2つよりは、差はないように感じますが、これも低速の方が滑らかです。
ただし、比較すると違いが出ますね。低速の方が仕上がりは良さそうです。
④ Creality HYPER SEREAS PLA
4つ目の「HYPER SEREAS PLA」です。
ハイスピードで印刷するとこんな感じです↓。半透明なので文字がちょっと分かりにくいです。ハイスピード用の PLA は、完全なホワイト色ではなく、半透明のものが多い気がします。
比較してみると、あまり差はないように感じますが、ローススピードの方が文字が見やすいかなという感じです。この辺りは、リンギングの影響を多少受けているのかもしれません。
分かったこと
ここまでの比較で分かったこととしては、
「60mm/s前後を推奨している低速フィラメントを使って高速プリントを行うと、仕上がり品質に影響が出る」という結果でした。
また、ハイスピード用フィラメントを使うと、「低速フィラメントほどは影響が出にくい」という感じでした。
大切なのは使い分け
そこで大切なのは、「使い分け」だと思います。
「プリントしたものを、何に使うのか?」をしっかりと考えて、高速プリントが良いのか、低速プリントで良いのかを判断すると良いと思います。
たとえば、「側面に文字を入れないモデル」や、「仕上がりはそこそこでスピード重視」という場合には、低速用フィラメントで、高速プリントを行って良いでしょう。